2020年東京五輪の男子サッカーでの金メダル獲得を目指し、日本サッカー協会の「海外人材発掘計画」が浮上した。同協会幹部が9日、明かした。日本協会大仁邦弥会長(68)は男女金メダルを目標に掲げている。特にハードルの高い男子サッカー強化のため、海外在住で日本と外国の二重国籍を持つ人材発掘に乗り出す。既に「東京五輪世代」のU-16日本代表に招集されている英国育ちで英国人の父、日本人の母を持つMFサイ・ゴダード(16)に続く逸材を探し出す。

 男子サッカーで東京五輪金メダル獲得に向け、人材発掘の網を世界に張り巡らせる。日本協会幹部はこの日「日本に住んだことがなくても、育成年代で素晴らしい能力を持っていて、日本国籍を保有する人材がいるなら積極的にチェックして、世代別代表に招集できればいい」と明言した。

 東京五輪開催が決まった8日、大仁会長は「男女とも金メダルを獲得し、国民の皆さんと喜びを分かち合いたい」と力強い談話を発表した。12年ロンドン五輪銀メダルの女子はまだしも、68年メキシコ五輪の銅メダル以来、メダルから遠ざかり、ロンドン五輪でも4位だった男子には高い目標設定になる。ただ、偉業達成へ重要な計画が浮上した。

 「海外人材発掘」。最高の実例がサイ・ゴダードだ。英国育ちの16歳で、父が英国人、母が日本人。日本語は苦手だが、名門トットナムの下部組織で背番号10をつけている人材という情報が入り、2月に原強化担当技術委員長が直接視察。3月末に開幕したモンテギュー国際で初招集され、今ではU-16日本代表で「10」をつけている。

 これまで育成年代は、日本全国に張り巡らされている各地区のトレーニングセンターで、幅広く選手の発掘や育成を担ってきた。先日、日本の強豪チームと対戦し、その実力で注目を集めたバルセロナの下部組織にいるFW久保建英も、東京五輪では19歳で主力になる可能性がある。今後はサイ・ゴダードのような二重国籍を持つ育成年代の人材を、世界規模で見いだし、育成していく計画だ。原委員長も以前から「今後もサイ・ゴダードのようなことは増えると思う。力があれば、どんどんコンタクトしていきたい」と、情報収集を強化していく考えだ。

 大仁会長はこの日、ブエノスアイレスから帰国。「男子はその(東京五輪の)世代の強化を意識しないといけない」と明言した。16年リオデジャネイロ五輪、そして7年後の東京五輪へ-。日本サッカー界の育成年代の強化は、日本サッカー全体の強化のための重要なトライアルにもなる。

 ◆サイ・ゴダード

 1997年4月2日、英国生まれ。英国人の父と日本人の母を持ち、英国で育つ。現在、名門トットナムのU-16に所属し背番号10をつける。日本の学校やクラブでのプレー経験がなく日本の世代別代表に選出されたのは極めて異例。攻撃的MFやボランチをこなす。【東京五輪代表入り期待の選手】

 <DF>

 町田浩樹(16)鹿島ユース

 イヨハ理ヘンリー(15)フェルボール愛知

 <MF>

 中川如哉(15)広島ユース

 鈴木徳真(16)前橋育英高

 サイ・ゴダード(16)トットナム

 <FW>

 杉森考起(16)名古屋U18

 小川紘生(16)浦和ユース

 久保建英(12)バルセロナ

 ◆サッカーの国籍変更

 日本代表ではFW呂比須、MF三都主、DF闘莉王がブラジルから日本へ国籍を変更することでW杯出場を果たしている。ただ、欧州や南米のように複数国籍取得者が多い地区では、国籍の該当する国々が代表招集で綱引きをするのは当たり前。バイエルンDFのJ・ボアテング、シャルケMFのK・ボアテングは異母兄弟でドイツとガーナの重国籍を持つが、J・ボアテングはドイツ代表、K・ボアテングはガーナ代表を選択している。アルゼンチン生まれの元イタリア代表MFカモラネージは祖父の母国イタリアとの二重国籍を持っていたが、最終的にイタリア代表を選択した。

 ◆重国籍者(複数国籍保持者)の国籍選択に関するFIFAの規約

 重国籍者は1度でも国際Aマッチ公式戦(親善試合を除く)に出場した場合、別の国籍の代表に「転籍」できない。世代別代表の公式戦に出場する前から重国籍を持つ選手については、世代別代表の公式戦への出場歴があっても、国際Aマッチ公式戦への出場歴がなければ1度だけ別の国籍の代表への「転籍」が可能。09年6月に「転籍」に関する年齢制限は撤廃された。