次期日本代表監督として、メキシコ人のハビエル・アギレ氏(55)の就任が29日、決定的となった。年俸180万ユーロ(約2億5200万円)、18年W杯ロシア大会までの4年契約で、大筋合意した。インセンティブなどの細部調整を残すのみ。ザッケローニ監督の2倍以上の年俸、歴代の日本代表監督としては史上最高額で、日本代表の再建を担う。契約細部が決まれば、7月中には来日し就任会見を開く。

 アギレ・ジャパン誕生が秒読みに入った。このほど、日本協会が依頼したエージェント会社と、アギレ氏の代理人が交渉し、年俸約2億5200万円でほぼ合意した。基本的には4年後のロシアW杯本大会までだが、まず2年契約をかわし、2年後に優先交渉権のオプション付きの見直し契約となる。ザッケローニ監督(120万ドル=約1億2000万円)の2倍以上で、歴代日本代表監督としては、史上最高額の年俸だ。

 最初のコンタクト(5月)で日本協会は、年俸150万ユーロ(約2億1000万円)を提示した。しかし合意には至らず、監督人選をすすめる原博実専務理事はコロンビア戦後「150万ユーロの提示か?」の問いに「(あのクラスの監督なら)それくらいで来てくれればいいけど…」と、年俸面での具体的な交渉状況を示唆していた。その後、日本協会が30万ユーロを上乗せし、アギレ氏も日本代表監督就任を決断したとみられる。

 同氏には、中東諸国からオファーが届いているが、同氏が最も気に掛けていたのが母国監督就任だった。実は、今大会前から次期メキシコ代表監督の声が上がっていた。しかし、今大会で熱血漢・エレラ監督の評価が高まり、日本協会にとっては追い風となった。

 アギレ氏は選手との対話を重視すること、さらに柔軟性のあるサッカースタイルも日本向き。W杯前、原専務理事は監督の条件として「人柄やコミュニケーション能力」を挙げていた。さらに「南米などより、欧州に家がある人が望ましい。休暇などで帰る際、欧州組をチェックできる」としていた。アギレ氏はメキシコ人だが現在、生活の拠点はスペインにある。

 今大会惨敗の敗因の1つに、ザッケローニ監督の経験不足が、現場サイドから漏れている。スタッフの1人は「W杯は、アジア杯とかコンフェデ杯とまったく別物なのに、監督はいつもと同じ感覚でやっていた」と指摘する。アギレ氏は、メキシコ代表監督として2度(02、10年)W杯を指揮しており、その点でも条件面を備える。

 残るは、ボーナスやスタッフ構成など契約の細部のみ。日本協会は、W杯アジア予選突破で、インセンティブ10万ユーロ(約1400万円)、アジア杯優勝で5万ユーロ(約700万円)を提示しており、アギレ氏と大きな開きはない。コーチ選任に関しても、外国人スタッフは同氏に任せており、障害にはならない。

 このまま順調に交渉が進めば、7月中にはアギレ氏が来日し、日本協会と本契約を結び、就任会見を開くことになる。8月下旬には、新生ジャパンのメンバーが発表され9月1日から始動する。ここから4年。日本サッカーの命運は、メキシコ人監督に委ねられる。(金額はすべて推定)

 ◆ハビエル・アギレ

 1958年12月1日、メキシコ市生まれ。両親がスペインからの移民で、本人の愛称はスペイン・バスク地方の人を意味する「El

 Vasco(エル・バスコ)」。現役時代はクラブ・アメリカ(メキシコ)やオサスナ(スペイン)などでMF、DFとしてプレー。メキシコ代表としても59試合で14点をマークした。指導者としてはAマドリードなどを経て、12-13年シーズン途中からエスパニョール監督。代表チームはメキシコを2度率いたことがあり、02年W杯日韓大会、10年南ア大会でともに16強に進出した。