浦和が「最後方の司令塔」のタクトで、前線からのプレスをかいくぐり、好機につなげる。8日午後の全体練習では、11日にホームで対戦する鹿島のプレス網を想定。DF3人、ボランチ2枚でのパス交換から、前線に縦パスを送って速攻につなげる形を入念に確認した。

 この日、日本代表から戻ったばかりで、別メニュー調整だったGK西川だが「5対5の形で、前線からプレスをかけてくると想定している」と説明した。5月の対戦で浦和を苦しめた大宮などと同様に、鹿島は前線から激しくプレスをかけてくると予想される。

 しかし西川は「ずっと、引いて守備を固める相手ばかりだったので、戦いがいがある」と笑顔をみせた。最終ラインでボールを保持した状態で、終始マンツーマンを強いられるのはリスクがあるが、浦和は「6人目」の西川が数的優位をつくる。

 DF森脇は「うちの周作くんは、ボール保持時はGKというよりリベロ」と言う。西川は抜群の足元の技術で、フィールド選手にまじって危なげなくパスをさばく。この数的優位を生かして、6対5の局面を打開すれば、ご褒美がある。縦パスを受けた前方5人の攻撃的選手には、広大なスペースと時間が与えられる。

 GKとは思えないほど、左足キックの精度、種類の豊富さを誇る西川は、周囲とのパス交換だけでなく、機を見て前線への縦パスも狙う。「つなぎのところを確実にやりつつ、やっぱり目指すところはゴール。そこにつながるパスを狙いたい。自分へのパスは、攻撃の第一歩だと考えてもらいたい」と意気込む。

 「自分からの前線へのフィードは、ショートパスをつなぎながらの駆け引きから生まれる。相手が前に来るなら、その背後に蹴る。そうでなければ、DFの前に落とす。そんな駆け引きを楽しみたい」

 GKにボールを下げるのはリスクがある。しかしその分、ボール奪取のチャンスと見る相手を引き出し、後方にスキをつくる効果がある。

 そんな駆け引きは、フィールド選手同様の技術を持つ西川ならではのもの。日本古来の柔術よろしく、相手の前からの圧力を逆に利用し、相手を倒すことができる。

 ACLで決勝トーナメントに進出していた浦和は、その分リーグ戦の消化が遅れている。鹿島戦を皮切りに、第1ステージ残り5試合を、すべて中2~3日で行わなければならない。

 しかもG大阪、広島、東京、神戸と難敵が続く。それだけに、初戦の鹿島をたたいて、弾みをつけておきたい。そのためにも「最後方のマタドール」西川が、鹿島プレス網を華麗にかわし、チャンスをつくる。【塩畑大輔】