ジュビロ磐田が7年ぶりにアウェーで鹿島アントラーズを破り、今季初の連勝を飾った。前半15分のFW川又堅碁(27)、同21分のMF中村俊輔(38)、後半34分のMF川辺駿(21)と、いずれも観客の度肝を抜くスーパーゴール。守備陣も最後まで体を張り、昨季王者を3-0で制した。完封勝利は今季初で4勝1分け3敗。勝ち点は13に伸び、10位から6位に浮上した。

 目の覚める3発だった。前半15分、中村俊のパスを受けたDF桜内渚(27)の右クロスに合わせ、FW川又がジャンプした。競り合ったDFの上から頭でたたき込んだ。驚異の身体能力を見せつけ、鹿島サポーターをあぜんとさせた。「今までの負けは『自分が決めていれば』という試合ばかり。マジで良かった」。3月11日アウェー大宮戦以来、ゴールから遠ざかっていたが、待望の今季2号でチームを勢いづかせた。

 2点目は中村俊だ。MF松浦拓弥(28)が競り勝ったゴール前のこぼれ球に反応し、左足を振り抜いた。わずかにアウト回転をかけたシュートは、約25メートル先のクロスバーをかすめ、ネットに突き刺さった。セルティック時代の2008年4月、宿敵レンジャーズ戦で放った伝説のミドル弾をほうふつさせる1発は、さらにイレブンを勇気づけた。

 だが、相手は鹿島。2点差でも「安全」とは言えず、磐田の守備陣は集中を切らさなかった。左太もも負傷で離脱したMFムサエフ(28)に代わって出場したMF山本康裕(27)が、中盤で攻撃の芽を摘んだ。同20分に負傷退場したGKカミンスキー(26)に代わったGK八田直樹(30)も好セーブを連発した。

 後半は鹿島の猛攻を受け続けたが、同34分、川辺がやってのけた。川又が相手DFに競り勝ったこぼれ球を受け、右サイドから右足を一閃(いっせん)。味方も驚く角度の浅い位置からの高速弾は、鹿島GK曽ケ端準の頭上を通過してゴールネットを揺らした。

 残り時間も全員が体を張り、今季初の連勝+完封勝利を飾った。かつて覇権を争った鹿島とのチーム力は大きく開き、名波浩監督(44)は「Jリーグをリードしている常勝クラブ。目指すところはそこ(鹿島)」と話していた。だが、待っていたのは快勝で「最初の2点はワールドクラス。完封できたことも良かった。また次節以降、強い気持ちをもってやっていきたい」。中村俊も「個人的にも鹿島に勝てていなかったし、良かったと思う。ただ、次の試合を勝たなければこの勝利の意味もなくなる」と言った。指揮官と大黒柱が特別な思いを抱く鹿島を相手に、敵地でつかんだ勝ち点3。この勝利は数字以上に意味がある。【前田和哉】