<J1:名古屋2-0山形>◇第33節◇28日◇豊田

 「最下位候補」の下馬評を覆し、山形が残留を果たした。勝てば自力で残留が決まる名古屋戦は、完封負け。重圧で金縛りにあい、ミスで流れを作れず完敗した。だが試合終了から約3時間後に、16位柏が大宮と1-1で引き分け。勝ち点差を4に広げ、12月5日の最終節を残しての残留が決まった。長く、苦しいシーズンだったが、J2仙台が昇格する来季は初めて、J1での「みちのくダービー」が実現する。

 敗戦のショックを引きずったまま会場を後にしたモンテ戦士が、試合終了から約3時間後、笑顔をはじけさせた。初めて体験する残留争いの重圧から解放された主将のMF宮沢は「正直ホッとした。自分たちで決めたかったけど、そんなことを言ってられる場合じゃなかった」と口元を緩めた。

 名古屋戦も重圧と戦っていた。0-1の後半31分、自陣ゴール前で相手に、細かくボールをつながれる。最終ラインがそろっているにもかかわらず、プレスをかけず、目でボールを追うばかり。小林監督が「ああいうのは、今までない」と心配した直後だ。名古屋MFマギヌンに、試合を決定付ける追加点を許した。

 「当初から、最終節までもつれると覚悟していた」と胸の内を明かした小林監督。選手宿舎で開かれた会見では「イエーイ」と両手を挙げて、喜びを表した。胃を痛め、眠れないと周囲に漏らしていたが「ラッキーですけど、みんな肩の荷が少し下りた。ホームで勝って、終わりたい」と、最終戦ではサポーターに恩返しの白星をささげる。

 J1最低の約10億円の低予算クラブ。J2を戦った昨季メンバーを中心に、大きな補強も出来なかった。開幕前、多くの解説者は最下位を予想。宮沢は「あれがすごい発奮材料になった。そうじゃないんだということを、みんなで証明できた」と胸を張った。

 来季も大幅な予算増は見込めない状況で、厳しいシーズンが予想される。ただ、王手をかけてから苦しみ抜いた残留争いの財産が、必ず生きるはずだ。【山崎安昭】