<プレシーズンマッチ:清水2-1横浜>◇20日◇静岡・愛鷹広域公園多目的競技場

 これが「ゴトビ・マジック」だ!!

 清水がプレシーズンマッチ横浜戦でDF太田宏介(23)FW大前元紀(21)のゴールで2-1で競り勝った。「先制-同点-勝ち越し」の試合展開で、アフシン・ゴトビ監督(47)は、2選手の交代でシステム変更を含む9選手のポジションを変更。限られた戦力を局面に応じて動かす、やりくり上手な指揮官は「2つの戦術でゲームをコントロールできた」と、対外試合初勝利を喜んだ。

 試合状況に応じてエスパルスの“形”が変化した。1-1で迎えた後半22分、ゴトビ監督は1枚目のカードとして、DFボスナーに代えFW永井を投入した。同時に、ピッチ上の5選手にポジション変更を指示。MF小野、FW高原をトップ下に並ばせ、MF枝村を1ボランチにした布陣にシフトした。

 指揮官は「今日の試合は勝つことが大事だった。リスクはあったけど、私はそれも嫌いじゃない」と、極端ともいえるほどの攻撃的布陣への変更だったことを明かした。意図はすぐに選手に伝わった。ダブルトップ下に入った高原が「初めてだったけど悪くなかったと思う」と話せば、小野は「相手にとっては嫌だったはず。大胆な采配だったね」と、ほほ笑みながらメリットを強調した。

 同33分にFW大前が勝ち越し点を決め、1つ目の采配はズバリ的中した。すると指揮官は、2枚目のカードとしてFW伊藤に代えDF岡根を投入。リードを奪ったことで、中盤の構成をダブルボランチに戻し、逃げ切りモードにシフトした。初のボランチ出場となったDF岡根は「びっくりした。監督からの指示は『2-1でゲームを終わらせてこい』と言われたので、やることははっきりしていた」と、役割を果たした。

 この日のベンチ入りメンバーは、横浜が18人に対し清水は16人。故障者と若手選手が多いこともあり、現状ではトップとサテライトのレベルの差は大きく、開幕後も少数精鋭での采配が強いられる。指揮官は「まだ、開幕まで2週間も準備できる。若い選手にも自信を持たせていきたい」と若手育成を重要視しながら、勝負師の顔は忘れない。「サッカーは一瞬で状況が変わるスポーツですからね」。局面を見極めながら、やりくり次第で、薄い層も分厚くするのがゴトビ流だ。【為田聡史】