INAC神戸のFW川澄奈穂美(26)が2011年シーズン限りでチームの主将を退任することが2日、分かった。なでしこジャパンで臨む今夏のロンドン五輪金メダル獲得のため、所属先での負担を減らし、個人のレベルアップに専念する。1日の全日本女子選手権では3-0で新潟を下して2連覇、リーグ戦とシーズン2冠を達成した。10年から続く公式戦無敗を27試合に伸ばして新たなシーズンへ突入する。

 最後までイキな気遣いを見せた。主将が掲げるはずの優勝杯を川澄は、この試合で引退する32歳のMF米津へ強引に手渡した。「いいから、オヤジさん(米津)が持って」。チーム最古参の功労者に最高の花道を演出し、川澄は「最強軍団の主将」という立場を締めくくった。

 川澄

 激動の年にキャプテンをさせてもらえたのは本当にいい経験でした。人間としても成長できたとも思えます。

 11年シーズンを主将として20戦負けなしの“完全制覇”で飾った。その主将が1年で大役を終える。チーム方針として単年での主将交代は既定路線。INAC神戸とすれば、チーム内での負担を少しでも減らし、代表活動へ専念させてやりたい配慮は当然ある。星川敬監督(35)は最敬礼でねぎらった。

 「あれほどうちのチームにとって主将としての適任者はいない。プレーで見せて対外的なことも全部やってチームの若手のことまで目を配って…。まあ、代えて若手の選手も川澄の苦労を少し分かった方がいい」

 なでしこジャパン7人に韓国代表2人とスター集団をまとめ上げ、激増するメディアへの露出も買って出た。

 川澄

 いつも言っていますが、主将として特別なことはしてないですよ。(メディアと選手との)橋渡しになってたかどうかは分かりませんが、そういう立場も勉強になりました。

 常に注目される集団。その主将の重圧から解かれ、五輪イヤーを最高の形でスタートさせた。

 川澄

 昨年もこの日に優勝して「いい1年になりそうだな」と思ってスタートしたことを覚えてます。今年もいいスタートが切れた。夏には五輪もありますしいい意味で意識し過ぎず、またいい結果を求めてレベルアップしていきたい。

 星川監督を始め、誰もが「今季一番伸びた選手」と太鼓判を押すエースストライカー。主将としての重圧が取れ、個人のスキルアップに時間を割くことが出来れば、さらなるステップアップが期待できる。クラブの“親心”に応えるためにも、ロンドンでは金メダルを狙う。【土谷美樹】