J1残留争い中の浦和が、来季監督の第1候補としてG大阪の西野朗監督(56)をリストアップしていることが20日、分かった。浦和は今季、選手としてチームで活躍したペトロビッチ監督(46)を招聘(しょうへい)。しかし、リーグ序盤に9戦勝ちなしなど低調が続き、終盤までJ1残留争いをする状況に陥った。来季の立て直しに向け、クラブはGM職を兼務できる手腕を持つ「全権監督」の就任を希望。G大阪を常勝チームへと押し上げた地元埼玉出身の西野監督に、白羽の矢が立った。

 08年アジア最優秀監督にも選ばれた名将・西野監督に、浦和がクラブを託す可能性が浮上した。現在リーグ15位の浦和は、来季の監督候補を日本人にしぼって検討しているが、西野監督はそのリストの筆頭。橋本光夫社長はこの日、後任監督についてはノーコメントとしたものの、J1残留が決定次第、具体的な契約内容などをつめて交渉を進めるとみられる。

 浦和は今季、優勝を目標に掲げてペトロビッチ監督のもと、シーズンをスタートさせた。しかし序盤から失速。0-1で敗れた9月11日山形戦後には、柱谷幸一GMをコミュニケーション不足を理由に電撃解任。後任のGMは置かず、総務部長だった山道守彦氏を強化部長代行とした。

 さらに0-1で敗れた10月15日大宮戦後に今季限りでの辞任を表明したペトロビッチ監督を、20日に橋本光夫社長が解任。ユースを指揮していた堀孝史監督の昇格を発表した。

 その一方で、来季に向けた動きも進められていた。監督としての手腕が実証されており、さらにチームの強化責任者となるGM職も兼務できる日本人監督を数人リストアップ。その第1候補が優勝争いを繰り広げているG大阪の西野監督だ。仮に西野監督との交渉が不調に終わった場合は、元日本代表監督の岡田武史氏らも候補に挙がってくるとみられる。

 浦和は今季、決定力不足に苦しんだ。チーム最多得点はFW原口の9点止まり。現在、ホームでは4戦連続で無得点だ。一方、西野監督率いるG大阪は今季、74得点でリーグ最多を誇る。FWの選手起用や補強策にも、改善の期待がかかる。さらに同監督は浦和西高を卒業した地元出身。早大時代にはサッカー界NO・1人気を誇ったスターで、熱狂的なサポーターにも受け入れられやすい。

 浦和は早ければリーグ戦次節にも、J1残留が決まる可能性がある。26日に行われる福岡戦(レベスタ)の結果と、残留争いをしている甲府の27日新潟戦(中銀スタ)の結果次第だ。

 浦和は07年にはアジア王者となったが、その後は下降。王者復活をかけてまずは残留を決め、その後来季の運命を託す監督交渉に本格的に着手する。

 ◆西野朗(にしの・あきら)1955年(昭30)4月7日、埼玉・浦和(現さいたま)市生まれ。浦和西高、早大を経て日立(現柏)入り。大学時代から主にMFで日本代表入り。96年アトランタ五輪日本代表監督を務め、ブラジルを破る「マイアミの奇跡」を実現。98年から柏監督就任。02年からG大阪監督に就任して05年Jリーグ、07年ナビスコ杯、08年ACL、08、09年度天皇杯でそれぞれ優勝。