【グアム(米国)26日=永野高輔】札幌DF奈良竜樹(18)が文武両道のJリーガーを目指す。早大人間科学部eスクール(通信教育過程)に合格。今季はJ1での戦いと並行しながら、同学部健康福祉科学科の単位取得に励む。札幌の選手で早大に合格したのは初。今季はセンターバックの主力候補としても期待されており、プレーだけでなく頭脳でもチームのJ1残留に貢献する。

 奈良がサッカーだけでなく勉学でも一流の道を突き進む。グアム合宿2日目、ハードな練習の直後に、うれしい知らせが待っていた。「合格できて良かった。サッカーと並行するのは大変だけど、しっかりやれば人として選択肢も増える。頑張って卒業したい」。前日本代表岡田武史元監督(現中国・杭州緑城監督)も輩出した名門で、頭脳も磨き上げる。

 2つの目的があった。合格した健康福祉科学科にはストレス病などを研究する心身医学や、リハビリテーション医学など多種多才な教授陣がそろっている。スポーツ医学の知識を高めるには最高の環境で「選手としての体のメンテナンスにも役に立つし、引退後にも、そういった仕事に関われればと思っている」と話した。現役選手としてのプラス効果だけでなく、引退後の第2の人生までも見据えた選択だった。

 J1と学業の両立は並大抵の作業ではない。それでも石崎監督は「すごいことじゃ。とにかく卒業できるように頑張ってほしいね」とエールをおくった。同大eスクールは07年に日本代表DF吉田麻也、08年に安田理大が合格。A代表の登竜門的コースにもなっている。

 札幌国際情報高では国際文化科に在籍し、英語が得意科目。グアム合宿ではDFノース、FWキリノの外国人2選手と同部屋となり、得意の語学力を駆使して積極的に会話に励んでいる。「英語圏の国に来たのは初めて。ノース、キリノとどんどん話して通訳の代わりも務められれば」。オーストラリア人ノース獲得による英語通訳の採用は現時点ではなく、韓国語通訳の李氏が兼務している状態。18歳の新人だが、早大生、センターバック兼通訳と三役をこなすつもりだ。【永野高輔】

 ◆大学生Jリーガー

 最近では、オランダ1部VVVに所属し、日本代表でも活躍するDF吉田麻也をはじめ、元日本代表DF安田理大(フィテッセ)らも早大人間科学部eスクールに合格している。昨年引退した、元日本代表主将の宮本恒靖氏は同大経済学部に在籍。フランス1部ディジョンのMF松井大輔は、京都在籍時の03年に立命大経営学部に入学している。

 ◆早大人間科学部eスクール

 文理融合型の通信制教育で、人間環境、健康福祉、人間情報の3学科がある。インターネットを利用した学習システムで、動画で配信される授業を受講しながら、テストやリポート提出を行い、卒業単位の取得を目指す。1学科30人程度のクラス制を採用しているが、通学せず、どこでも学習することができる。昨年度も現役Jリーガー4人が合格している。

 ◆奈良竜樹(なら・たつき)1993年9月19日、北見市生まれ。北見小泉小2年時に北見ブルーサンダースでサッカーを始める。北見小泉中2年からセンターバック。09年に札幌国際情報高進学と同時に札幌U-18入り。昨季途中でJリーグ出場可能な2種選手登録され、10月8日の天皇杯2回戦水戸戦でトップチームデビュー。Jリーグデビューは昨年10月26日の徳島戦。今季、札幌U-18のMF荒野ら同期4人とともにトップ昇格。J2通算7試合無得点。家族は母親と弟。180センチ、70キロ。右利き。血液型B。