ドルトムントの日本代表MF香川真司(22)が、欧州での未来像を語った。現地でスカパー!の「UEFAチャンピオンズリーグ決勝ラウンド開幕特番」収録に出演。注目される今後の移籍先についてスペイン、プレミア、イタリアの3カ国のリーグを挙げ、欧州チャンピオンズリーグ(CL)優勝を狙えるクラブを自らの力でつかみ取る決意を語った。目標のビッグクラブ移籍へ、結果を求め続ける。

 夢はさらに膨らんでいた。この時期のドイツは、気温が氷点下にまで下がる。体を刺すような寒さのスタジアムで、大観衆を熱狂の渦に包み込むプレーを見せ続ける香川は、どこか自信に満ちた様子で現れた。ドルトムント市内のイタリアンレストランで行われたインタビュー。自身の歩んできた道のりと、未来像を約1時間も熱く語った。

 香川

 今、8万人の超満員の中でやることに慣れている自分が怖いですね。C大阪でやっていた当時は、J2がほとんどで(観衆が)4000人くらいしかいなかった。でもあの舞台に初めて立った時、プロに入ったデビュー戦は興奮しました。8万人に慣れている今でも、4000人の興奮は忘れられないです。

 まだ22歳。これほど速い速度で成長を続ける日本人選手はいるだろうか。話を聞いた日の前日、1月28日のホッフェンハイム戦では本拠地の超満員の観衆の前で2得点を挙げていた。昨季に続くドルトムントのリーグ制覇へ、欠かせない存在だ。その一方で活躍すればするほど、欧州の強豪から注目されるようになるのがこの世界。今後の移籍についても話してくれた。

 香川

 欧州は、いきなりビッグクラブに行けるような甘い世界ではない。ドルトムントを選んだのは、まず結果を出すことを考えたからです。これからは自分が行きたいところ、やりたいスタイル、好きな国を選ぶ。それは結果を残すことで、自分で選ぶ権利を得ることができる。そこにチャレンジしていきたい。

 では理想とするクラブはどこなのだろうか。ちょうど1年前からプレミアリーグのマンチェスターUから本格調査を受けるようになり、ここに来てセリエAのACミランも興味を示している。注目される今後について、聞いてみた。

 香川

 今季初めて欧州CLに出て、もっと上に行きたいと思うようになりました。バルサやマンU、レアルでやっている選手は本当にすごい。あの舞台で結果を出すのは簡単なことではないです。でも欧州CLでもっと上を見てみたいな。そういうことを考えた時に、バリバリに戦っているクラブに行ってみたい。スペイン、イタリア、プレミア。その中で(欧州CLに)出ているクラブであれば、こだわりはない。ビッグクラブでチャレンジしてみたいです。

 夢は手の届くところまで近づいている。ドイツ誌「キッカー」は、1月の欧州ベスト11に香川を選出した。FWメッシらバルセロナから3人、C・ロナルドらRマドリードから4人-。そうそうたる世界の超一流選手と、肩を並べた。「結果を残し続ける」ことで現実になるビッグクラブ移籍は、もう目の前にある。

 香川

 故障もあったし、調子の良くない時もあって、11年はいいスタートが切れなかった。そういう意味で12年はいいスタートが切れた。でもこれがベストではいけない。(最近は)パスが意識としてあって、それを選んできたんです。その中でプレーの幅を広げるためのパスが生きてきた。でも根本は仕掛けないといけないから。最終的にゴールを取らないと評価されないし、ゴールを狙う姿勢がボクの強みだから。それを捨てちゃいけないと思う。

 高校2年でC大阪とのプロ契約をつかみ、21歳で世界に飛び出した。とんとん拍子に歩み続ける男には、独自の考えがある。

 香川

 初めてプロになった時も別にうれしくなかった。自分の身内は喜んでいたけど、今思えば盛り上がりすぎ。プロになることは絶対に不可能なことではないんです。誰でもなれるチャンスはある。プロになって、結果を出すことが難しい。入ってから、どういう人生設計をするか。それが大事だと思う。プロは子どもの頃からの夢だったけど、これから努力しないといけないという思いの方が強かったですね。達成感を得るためには結果しかないわけですから。欧州に来る時も、そんな思いでした。

 そんな香川が今、強い刺激を受ける存在がいる。私生活でも仲が良く、セリエAのインテルミラノに在籍するDF長友の姿に、まばゆいばかりの光を見る。

 香川

 (長友)佑都はすごい。彼はボクに夢を見させてくれている。チャレンジを続けることの大切さを教えてくれている。自分で(ビッグクラブを)勝ち取っているんですから。

 近い将来、香川も同じように欧州CLで優勝を狙えるようなクラブにいるだろう。それは香川の夢であり、日本サッカー界の夢でもある。【取材、構成=益子浩一】