男子リレーチームがピンチに陥った。男子200メートル決勝は、予選1位の高瀬慧(26=富士通)が、左脚をつるアクシデントでレース途中で棄権した。大会を欠場した山県亮太(22)に続き、400メートルリレー日本代表の中核に異変。16年リオデジャネイロ五輪の枠取りがかかる世界リレー選手権(5月2、3日・バハマ)へ、不安が募った。

 詰め掛けた6000人がざわついた。夕暮れ時の200メートル決勝。勢いよくスタートした高瀬が50メートルを過ぎて、失速していく。脚を引きずり、100メートル付近で止まるとその場にうずくまった。抱えられて控室に消え、すぐに左脚の治療が施された。「走る前につっていた」と太もも内側の内転筋がけいれんしていた。筋肉を伸ばすマッサージを受けたが、「明日は様子を見て考えたい」と今日100メートルの出場は未定となった。

 先月のテキサスリレーでは、追い風参考も日本記録の20秒03に迫る20秒09の好記録で走っていた。好調だっただけに個人だけでなくリレー陣にとっても大打撃となる。すでに山県が腰痛で今大会を欠場しているが、上位8位までにリオ五輪の出場枠が与えられる世界リレー選手権が来月に控える。直前になって主力2人に不安要素が浮上した。

 日本陸連の苅部俊二短距離部長からは、「頭が痛いですね」と本音が出た。高瀬は軽傷だが、もし五輪切符がかかる舞台で再発したら…。「いままでもつることはあった。リレーがあるので微妙ですね。かなりの痛手」と事態を重くみた。

 桐生を筆頭に、400メートルリレーはタレントがそろい、08年北京五輪銅メダルの再現の期待も高い。5月にリオ五輪の枠を取れない場合は、来年に持ち越しとなり、強化プランの変更を余儀なくされる。春先から明るい話題が多かった陸上界に、暗雲がたれ込めてきた。【阿部健吾】