青学大が、史上初の3連覇&大学駅伝3冠に輝いた。2位早大に33秒差をつけて迎えた復路。山下りの6区から早大を突き放し、2位東洋大に7分21秒差をつける11時間4分10秒で総合優勝を決めた。往路も復路も3年連続で制したのは、1937年(昭12)の日大以来80年ぶり。最強世代といわれた「山の神」こと神野らが昨年抜けたが、アンカー、安藤悠哉主将(4年)を中心にチーム力で快挙を達成した。

 大手町の高層ビル群に歓声が響き始める。最終10区、独走する安藤の姿はまだ見えない。ゴールを待つエース一色(4年)の目に光るものがある。マラソンで東京五輪を目指す実力者は昨年まで、駅伝をわずらわしいと思うこともあった。そんな一匹おおかみが「うるっときた」。その涙が、今年の青学大の強さを象徴していた。

 神野らの卒業から始まった新チーム。一色だけが抜けた存在で、その他の4年生はケガで出遅れるなど存在感は希薄だった。最強世代に頼り、今度は一色に頼ろうとしていた。原監督は「後ろに隠れる甘えを払拭(ふっしょく)したかった」と、一色以外の4年生をあえて突き放した。

 例年なら原監督が就職活動の相談に乗ることもあるが、何もしない。安藤は15社以上に落とされながら、スポーツメーカー「ニューバランスジャパン」に内定。他の4年生も苦戦の就活を乗り越えた。原監督は「青学陸上部だからとの甘えを捨て、自分で何かを勝ち取る大切さを植え付けたかった」と説明。夏を過ぎた頃、4年生のたくましさは増していた。

 最強世代、一色頼みを脱却した4年生。安藤は主将として各学年のミーティングと、主将、マネジャー、学年長、寮長が話し合うスタッフミーティングを半年に1回から月1回に増やした。競技だけでなく、寮の食器の水切りを丁寧にやるなど、生活ルールまで徹底。細かいことも言い合うことで、学年を超えた結束力を高めた。

 箱根本番。一色は2区で区間3位と力を発揮できなかった。だが3区で秋山(4年)が「湘南の神」と呼ばれる好走で、5区の山の神不在をカバー。復路では7区で田村が脱水症状でタスキが途切れそうになる危機も、最後は2位に7分以上の差をつけ総合3連覇。区間賞は昨年の6人から2人に減ったが、昨年の最強世代も逃した3冠を達成した。一色は「昨年は走力。今年は総合力で勝った」と強調した。

 4年生14人のうち、陸上を続けるのは一色ら3人。安藤ら他の選手は普通の社会人になる。一色は「4年になって初めて、自分が支えられていることが分かった。1人じゃないと実感できた。今後の厳しい練習の原動力になる」。安藤は「努力すれば夢はかなう。この経験は社会で必ず生きる」と前を見た。今季のテーマは「個の色合わせて緑(大学カラー)となれ」。雑草の4年生世代が青学大を最高に輝く緑色にした。【田口潤】