リオデジャネイロ五輪男子400メートルリレー銀メダルの桐生祥秀(21=東洋大)が今季初戦で日本歴代7位の好タイムをたたき出した。追い風1・4メートルの1レース目で10秒04をマーク。自己記録に0秒03差に迫った。2レース目こそ10秒19(向かい風0・1メートル)に終わったが、今年こそ日本人初の9秒台への期待が高まってきた。山県亮太(セイコーホールディングス)は1レース目で10秒06、2レース目で10秒08。8月にロンドンで行われる世界選手権の参加標準記録10秒12をそろって突破した。

 いきなり10秒04だ。追い風1・4メートルの好条件だった1レース目。課題のスタートに成功すると、中盤で「桐生ジェット」を噴射。一気に加速し、相手との差をどんどん広げた。その15分前、リオ五輪男子400メートルリレーで一緒に銀メダルを獲得した山県が10秒06を出した。それに刺激を受けたのか、桐生が9秒台への可能性を改めて感じさせる走りを今季初戦で見せた。

 オーストラリア合宿中に「試合の感覚を取り戻す方が大事」と、練習の一環として世界の一線級は出場していない競技会に参加した。日本歴代7位、自己記録3位、自身7度目の10秒0台で、8月の世界選手権(ロンドン)の参加標準記録10秒12を楽に突破した。2レース目こそ10秒19で、山県に先着を許すも「(けがなく)2本走れて良かった。去年よりいい感じできている」と手応え十分だった。

 今季はオフに体重を2キロ増やし、70キロになった。「去年と一緒ではだめ」。リオ五輪では400メートルリレーで銀メダルこそ獲得したが、個人は100メートル予選敗退。東京五輪を見据え、身体作りに着手した。「脂肪が落ちました。全体的に筋肉がついた」とうなずく。その新たな肉体の試運転の場。備わったエンジンの加速力は抜群だった。

 「4月に合わせている」とピークはまだ先にある状態でこのタイム。日本人初の9秒台への期待はますます高まる。次戦は未定だが、出雲陸上(4月23日)か織田記念(同29日)の出場を視野に入れている。過去何度も日本人が阻まれてきた壁を今度こそ打ち破る。