日本ラグビー界の秘蔵っ子、筑波大のSO山沢拓也(3年)が、3月からフランス1部リーグの強豪ラシン・メトロに練習生として参加することが、12日までに分かった。エディー・ジョーンズ前日本代表ヘッドコーチが19年W杯日本大会の主役候補と名指しした逸材。現在は左膝の故障からのリハビリ中だが、回復が見込める今春、欧州最高峰の「トップ14」に挑戦することになった。シーズン終了の5月までの参加だが、実力が認められれば来季以降はプロ契約を結び、本格参戦する可能性がある。

 3年後のW杯のエースと目される山沢が、日本ラグビー界の期待を背負って欧州へわたる。埼玉・深谷高3年でエディージャパンの合宿に招集され、練習マッチにも出場。ジョーンズ氏が昨年のW杯後に日本から去る会見で、19年W杯の有望選手に山沢の名前を挙げ「キャッチとパスの技術、ラン、スペースを見つける感覚は他の若手にない」と絶賛した。スピードと強靱(きょうじん)なボディーバランス、正確なキックに卓越した状況判断も光る。過去には「1日も早く復帰して代表に戻って欲しいと祈っている」と話したほど。だが、その山沢は現在もリハビリ中だ。

 14年3月のジュニア日本代表の南半球遠征で、左膝前十字靱帯(じんたい)を断裂した。同年12月の大学選手権で戦列復帰したが、同21日の関西学院大戦を最後に再び膝を痛めると、1年以上も試合に出場していない。ランニングやキック練習は行っているが、まだ少し痛みが残るため体をぶつけ合う練習はやっていない。それでも完治への見通しがたったことで、新たな挑戦に打って出た。

 ただし長期ブランク明けで、いきなり欧州のスター軍団への参加だ。そんな異例の留学の裏には、山沢の才能にほれ込んだ2人の名将の姿があった。かつてオーストラリア代表を率いたパナソニックのロビー・ディーンズ監督、そしてヤマハ発動機の清宮監督。トップリーグを代表する指揮官は目先の獲得競争を超え、日本ラグビーのために協議したという。早くから海外でもまれる経験が将来の成長につながると意見は一致。海外武者修行へ背中を押し、関係者を通じてフランス行きが決まったようだ。

 トップ14のシーズンは毎年8月から翌年5月。今回の期間は3月からの3カ月の予定だが、実力が評価されればそのままプロ契約を結ぶ可能性もある。実現すれば、日本初の大学生海外プロ選手が誕生する。ラシン・メトロには昨年9月のW杯でMVPに輝いたニュージーランド代表のスーパースター、SOカーターが今季から加入。世界一の司令塔から直接学べる場がある。関係者によれば、山沢はフランスでのプレーを心待ちにしているという。

 ◆ラシン・メトロ 1890年創部。フランス1部リーグ「トップ14」で過去5度のリーグ優勝を誇る名門。本拠地はパリ・コロンブのイブ・ド・マノワール競技場。今季加入するSOカーターの年俸は約2億5000万円で、ラグビー選手としては世界最高額となっている。昨季の成績は5位。

<山沢拓也(やまさわ・たくや)アラカルト>

 ◆生まれ 1994年(平6)9月21日、埼玉県熊谷市生まれ。

 ◆経歴 熊谷東中-深谷高-筑波大。

 ◆サッカー 中学まではサッカーに打ち込み、名門クマガヤSCで快足FWとして活躍。武南、流通経大柏、山梨学院大付など名門校からオファーがあった。

 ◆直筆の手紙 兄一人さんが所属した深谷高ラグビー部の横田監督から、直筆の手紙で誘われる。「2019年W杯で日本代表に」の殺し文句が決め手となり、ラグビーを選択した。

 ◆スーパー1年生 競技歴9カ月の1年ながらSOのレギュラーで花園出場。2回戦の石見智翠館(島根)戦で4トライを奪った。2、3年でも出場したが、最高は3回戦進出。

 ◆40年ぶりの高校生 12年7月、日本代表の菅平合宿メンバー38人に17歳で入った。高校生の代表メンバー入りは40年ぶり。持ち味はスピード、巧みなランだったが、ジョーンズHCが着目したのは「ボールタッチのうまさ」。6月に日本代表予備軍のジュニアジャパンでトンガ戦に出場。

 ◆サイズ 178センチ、85キロ。