世界選手権の団体銀メダリストで、昨季限りで引退した植松鉱治氏(29)がNHK杯を観戦し、五輪代表に決まった加藤の強さについて語った。

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 見ている方としては非常に面白い代表権争いでした。加藤、田中の両選手が第1班で最後までギリギリの戦いを繰り広げました。5種目を終えて加藤選手が0・4点リード。しかし最終種目は田中選手が得意とする鉄棒。加藤選手に少しでもミスがあれば逆転されます。その緊張感は、会場全体に広がっていましたが、その中で、2人ともほぼ完璧な演技。空気を味方にしたというか、落ち着いていましたね。

 0・1点差で見事に逃げ切った加藤選手のすごいと思う部分は、良い意味でマイペースなところです。自己分析力にたけていて、大会までの逆算で着実に仕上げていく。4月の全日本選手権も、2週間前までは全然調子が上がっていなかったのに、いざ本番となればしっかり演技できる。周囲に影響されないんです。

 普通は周りが調子を上げてくれば「自分もやらないと」とペースを変えてしまう選手が多い。でも加藤選手には、それがない。コンディションを作り上げる順番が分かっていて、それを必ず実行できる。精神力という言葉だけでは表現できない強さですね。

 今回の結果で田中選手も五輪代表入りは濃厚になったと思います。練習をともにした仲間として、うれしい大会になりました。

 ◆植松鉱治(うえまつ・こうじ)1986年(昭61)8月30日、大阪府松原市生まれ。松原七中、清風高を経て仙台大進学。4年時の2008年全日本学生選手権個人総合で内村を抑えて優勝。コナミでも「鉄棒のスペシャリスト」として活躍。2010年世界選手権では日本の団体銀メダルに貢献。2013年全日本選手権の鉄棒で優勝。昨季限りで現役を引退した。