プレーバック日刊スポーツ! 過去の6月28日付紙面を振り返ります。2005年は柔道の元五輪代表で、現在は参議院議員を務める谷亮子氏のおめでたを1面で報じています。

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 ママでも金メダルを取ります。女子柔道のシドニー、アテネ両五輪48キロ級金メダルの谷亮子(29=トヨタ自動車)が27日、都内で会見し、妊娠したことを明らかにした。現在3カ月で、出産は来年2月上旬の予定。出産後も引退せず、08年北京五輪で日本選手初のママさん金メダリストを宣言した。今年9月の世界選手権(カイロ)は辞退し、06年12月の福岡国際から復帰するとみられる。

 フラッシュを浴び、晴れやかにほほ笑みながら谷はひな壇に登った。髪をアップにまとめ、大粒の真珠のイヤリングを揺らし、母親になる喜びに声を弾ませた。「おめでたが現実になりました」。自然と笑いが広がる。「これまでに感じたことのない、とても大きな喜びでした」。率直に、自分の言葉で妊娠3カ月の幸せを表現した。

 すでにおなかに子供がいた今月上旬の和歌山・白浜合宿では、何も知らずに畳にたたきつけられていた。「(赤ちゃんは)大丈夫だったんしょうね。強い感じだったんでしょうね」。報道陣から笑いが起こるが、谷夫妻の生命力、運動神経を受け継いだとも言える。「一般の女性と同じように」妊娠の予感を抱き、中旬に夫でプロ野球オリックスの谷外野手に相談した。2人で時間をつくり関西の病院を訪れたのは24日。朗報に「感動するね」と夫が漏らす言葉を聞き、谷も「ママになるという実感が全身を回った」と言った。

 命をはぐくみ、谷の選手としての意欲はなえるどころか、ますます燃えてきた。「引退はないですね。赤ちゃん産んで大きなパワーが出ると思います。(日本の)女性アスリートで赤ちゃんを産んで金メダル取った人はいません。私は北京の五輪で3連覇を成し遂げたい。田村で金、谷で金、ママになっても金です」。

 明確な目標を持ち、それを達成してきた。今回、母親としての金メダル、五輪3連覇を憶することなく口にした。カイロの世界選手権は辞退することになったが、抜群のタイミングだ。来年2月上旬に出産予定。08年北京五輪から逆算すると、07年リオデジャネイロ(ブラジル)での世界選手権出場のためには、06年12月の福岡国際が復帰の一つのめどになる。出産から約10カ月間かけて調整することができる。

 さらに強い裏付けが谷を支えている。「ここ数カ月休んだところで、ここまでの蓄積が私にはあります。15歳でデビューしてからずっと休むことなく積み重ねてきましたから。大丈夫だと思います」。常に柔道を優先し、ケガにも負けずに結果を出してきた。ケガに負けない、自分に負けないすべを持つ谷に、出産は期待であって不安ではない。「気を付けること?そうですねえ。振動が良くないので、すり足になってますね」。柔道の基本中の基本、すり足に磨きをかけ、明るく、たくましく母親への準備に入る。

 ◆谷亮子(たに・りょうこ)1975年(昭50)9月6日、福岡市生まれ。旧姓田村。小学2年から東福岡柔道教室で柔道を始める。福岡工大付高-帝京大-日体大大学院を経て、現在はトヨタ自動車所属。世界選手権6連覇中。福岡国際優勝12回。全日本女子選抜体重別選手権優勝14回。03年12月にプロ野球オリックスの谷佳知外野手と結婚。04年アテネ五輪で日本女子初の2大会連続金メダル獲得。146センチ、48キロ。

 ◆谷夫妻と親交のある長嶋茂雄氏も、お祝いのコメントを寄せた。「谷亮子さん、おめでとうございます。当面はご自身の体を何よりも大切にされ、元気なお子さんを出産されることを願っています」と待望の第1子の妊娠を喜んだ。自身は病のため、アテネ五輪での指揮を断念したが、夫の谷が全日本代表として銅メダル獲得に貢献したこともあり、気に掛けていたようだ。出産後のことには「無事にお母様になられた後、北京のメーンポールに日の丸を掲げる瞬間を多くのファンとともに夢見ています」と3大会連続の金メダルへの期待感を口にしていた。

※記録や表記は当時のもの