リオ五輪女子レスリングで銀メダルを獲得した吉田沙保里(33)が泣いた。吉田は31日、都内で行われた日本レスリング協会の五輪報告会に出席。「今はこの銀メダルを新鮮に思い、大好きです」と笑顔で話したが「また次の道に向かって頑張っていきますので」で言葉を詰まらせ「応援よろしくお願いします」と言って隣の伊調にマイクを渡すと、指で涙をぬぐった。

 あいさつにも第一線を退く覚悟をにじませたが、この日も「引退」の2文字は口にしなかった。周囲への影響もあり、自分だけの考えで去就を決められない立場。テレビ出演など幅広い活動を続けるためには、現役選手の方が有利な場合もある。もちろん「レスリング愛」も強い。帰国後は東京での活動がメーンだが、本拠の愛知に戻ると至学館大のグラウンドを走る姿があるという。「やっぱり、気持ちいいですから」。体を動かすことは、今後も辞められそうにない。

 リオ五輪チームリーダーでもある至学館大の栄和人監督(56)は「しばらく休養でも」と話した。「至学館大や代表チームで指導をしながら、自分が東京五輪を目指したくなったら試合に出てもいい」と続けた。現在も登坂らの若手を指導するなど同大のコーチ的な役割も負うが、改めて肩書をつけて「コーチ兼選手」として再出発することを提案したのだ。

 この日、五輪4連覇を達成した伊調とともに、日本協会から純プラチナの特製メダルを贈られた。「女子で4個の金メダルは、吉田がいたからこそ。吉田の銀メダルは金以上の価値がある」と福田会長。現在は金より価格が低いプラチナだが、純プラチナなら金メッキの五輪メダルとは価格もケタ違い。それを聞いた吉田は「カオリン、カオリン大変!」と言って伊調に知らせるなど、相変わらず明るく振る舞っていた。

 「しかるべきタイミングで吉田が会見をする」と栄監督は話したが、時期は未定。今はスムーズに「次の道」に進むために、周囲との調整に追われているようだ。圧倒的な強さと存在感で女子レスリングを引っ張ってきた吉田だけに「次の道」も簡単ではない。