18歳の宇野昌磨(中京大)が、グランプリ(GP)シリーズ今季初戦を優勝で飾った。ショートプログラム(SP)首位に続いてフリーもトップとなり、自己ベストの合計279・34点。世界で宇野しか跳べない4回転フリップを含む4回転ジャンプ3本を初めてそろえた。GP初優勝した昨季のフランス杯は、パリでの同時多発テロの影響でSPのみの実施だったため、SPとフリーを演じての優勝は初めて。トップで戦える自信をさらに深めた。

 宇野が3本目の4回転ジャンプを降りると会場の空気が変わった。名演の予感が漂う。だが、2つのジャンプを残し「ノーミスがちらついた」瞬間、転倒。観客からため息がもれた。予定していた3回転半-1回転ループ-3回転フリップの基礎点は15・73。このミスさえなければ、史上4人目となるフリー200点超えだった。滑り終えると「もったいなかったー」と思いながら、笑顔で頭を抱えた。

 フリーで4回転3本をそろえるのは、ISU(国際スケート連盟)公認大会で初めて。成功の要因は「割り切り」にあった。冒頭は世界で宇野しかできない4回転フリップ。本番前の6分間練習では1本も成功せず「跳べないなら思いっきりいこう」と開き直り、美しく着氷した。4回転トーループは2週間前の今季初戦後、より演技になじむようにと、跳ぶ前にステップを入れる難しいものに変更。十分構えられない分「何も考えられなかった」。無心で跳び、2・29点もの出来栄え点を得た。4回転-2回転の連続ジャンプも「跳べると思ってなかった」。楽な気持ちが、いいジャンプを生んだ。

 昨季は、練習の成果を本番で出し切れずに苦しんだ。世界選手権は7位に終わり、涙を流した。本番でいいパフォーマンスをするにはどうすればいいか。ヒントになったのはリオ五輪で結果を出す選手の「顔」だった。体操団体金の白井は集中した表情で演技した後、すぐに笑い、楽しんでいるようにみえた。「自分は切羽詰まった顔をしていたと思う。それと集中して気合が入っている顔は全然違う。そこを目指したい」。今大会、練習以外は部屋にこもってゲームをするか、大好きなアニメを見てリラックス。試合前、準備をしつつ他の選手の演技を見て徐々に気持ちを高めていく。緊張感を感じつつ、笑顔でリンクに立てた。

 この結果には「去年の失敗が無駄じゃなかった」と喜びをかみしめた。「羽生選手、ハビエル選手と戦っていける選手に、本当に近いうちになれるように」。いつかではなく「近いうちに」。言葉に自信がこもった。【高場泉穂】

 ◆宇野昌磨(うの・しょうま)1997年(平9)12月17日、名古屋市生まれ。5歳で競技を始める。14年ジュニアGPファイナル、15年世界ジュニア選手権優勝。15~16年シーズンからシニアデビュー。15年GPファイナル3位。家族は両親、弟。趣味はゲーム、アニメ鑑賞。野菜嫌い。あこがれの選手は高橋大輔氏。159センチ。