男子400メートル個人メドレーは100分の1秒差の決着でした。瀬戸大也選手(22=ANA)が日本選手権で初めて萩野公介選手(22=ブリヂストン)に勝った。それは「スタートの差」だったと思います。

 スタートといっても、このレースのことではありません。2020年東京五輪に向けた4年間の長いレースのことです。昨年のリオ五輪で金メダルを取った萩野選手はその後、右肘の手術などがあって出遅れました。瀬戸選手はリオの悔しい銅メダルで、東京五輪の「金メダル」という目標がより明確になった。4年後へ向けて、W杯転戦など積極的に大会に出場して、早いスタートを切りました。

 瀬戸選手は勝利へ向けてより貪欲になれるというか、どんなレースも勝つという気持ちで泳いでいると思います。0・01秒差でも勝ったことで影響は大きいのではないでしょうか。競泳人生の新たなチャプターへと進んだ気がします。

 萩野選手は4年間かけて徐々に準備を整えていくのかなと思います。金メダルという結果で大きな自信を得ていますから、焦る必要はないでしょう。

 2人とも新しいキャップと水着で、社会人としての第1歩を踏み出しました。今後のライバル対決がまた楽しみになってきました。(伊藤華英=北京、ロンドン五輪代表)

 ◆伊藤華英(いとう・はなえ)1985年1月18日、埼玉県生まれ。00年日本選手権に15歳で初出場。01年世界選手権で初代表入り。08年北京五輪で背泳ぎ2種目出場、12年ロンドン五輪は自由形リレー2種目出場。12年秋に現役引退。順大大学院博士後期課程修了。日大非常勤講師。173センチ。