錦織はコートの球足が速いと感じているようだが、数値ではやや遅めと出ている。そこに“ずれ”が生じているのではないか。フォアが完全に狂ったのが、その証拠でもある。球が弾んで速く飛んでくると思い、ラケットを速く出す。しかし、まだ球は届いておらず、体が前のめりになり打点が狂う。

フォアは焦ると、体をひねり構えた状態から、スイングをする体の開きが早くなる。体が開ききってから、球がラケットに当たるため、体のひねりが使えない。手打ちになり、腕と手だけで調整すると、ぶれが大きくなってしまう。

2週間前のパリの大会後、5日間、テニスから離れたと聞いた。休養は大事で、それ自体は選手にはよくあるパターンだ。しかし9月の全米以降、大会に出続けて体にしみこませたリズムが、いったんリセットされたことも影響しているのかもしれない。

本人も話しているが、次戦のためには、忘れるのが一番だと思う。新たな一戦として臨むことで、気持ちも体も違ってくる。錦織の修正能力は非常に高い。(元デビス杯代表・辻野隆三氏)