<レスリング:全日本選手権>◇初日◇21日◇東京・代々木第2体育館

 男子の松本兄弟が同時優勝を飾った。グレコローマン60キロ級で昨年世界選手権銀メダルの兄隆太郎(25=群馬ヤクルト販売)が3連覇を果たせば、フリー84キロ級の弟篤史(23=ALSOK)もノーシードから勝ち上がり、初優勝。2人はロンドン五輪出場を懸けて、来年3月のアジア予選(カザフスタン)に出場することが確実。兄弟同時五輪出場に1歩近づいた。

 夢の同時五輪出場へ、松本兄弟がスタートラインに立った。負ければロンドン五輪の道が薄れゆく今大会。両親や妹らが見守る中で、兄弟同時頂点に立った。「家族が全員来てくれて、その前で2人で優勝できた。頑張ったかいがある」。隣の弟篤史を褒めながら、兄隆太郎が胸を張った。

 ノーシードの弟が鍵だった。2回戦で、今年の世界代表の松本真と対戦。「取られるとしたらタックル。まず、相手の攻撃をつぶす」。兄が「自分の試合より緊張した」という大一番を、対策がはまって2-0で制すと、決勝では今年2度負けている門間戦を前に兄の忠告が効いた。「突っ込むな。空回りするな」。指示を守って圧倒。弟の初優勝に「刺激を受けた」と兄も快勝の3連覇で花を添えた。

 男子レスリングでは今年の世界選手権に同時出場した双子の湯元健一、進一ツインズが有名。だが、昨年の世界選手権で史上初の同時出場を果たしたのは、松本兄弟だった。兄弟で五輪に出れば日本レスリング界初。弟の篤史は「兄は五輪切符を取ると思う。重量級は難しいと言われるけど、自分もついていく」。2人の夢へ、第1歩を踏み出した。【今村健人】

 ◆男子レスリング五輪への道

 フリー60キロ級の湯元健と66キロ級の米満は、今大会優勝で代表決定。他の選手が優勝した場合は3月20日の五輪トライアルで決める。その他の階級は、今大会の優勝者を派遣する来年3月のアジア予選(カザフスタン)で、上位2位に入り五輪枠を獲得すれば決定。逃せば五輪1次予選(中国、4月)で上位3人、さらに逃せば五輪最終予選(フィンランド、5月)で上位2人の出場枠に挑む。

 ◆松本隆太郎(まつもと・りゅうたろう)1986年(昭61)1月16日、群馬県館林市生まれ。5歳で競技を開始。館林高3年時に高校選手権、国体優勝。日体大-群馬ヤクルト販売。09年全日本選抜、全日本ともに初優勝。10年世界選手権銀メダル。168センチ。

 ◆松本篤史(まつもと・あつし)1988年(昭63)3月24日、群馬県館林市生まれ。館林高-日体大。05年アジア・カデット優勝。06年世界ジュニア5位。08年全日本2位。10年全日本選抜で優勝、プレーオフも制し、世界選手権初出場も2回戦敗退。181センチ。