<フィギュアスケート:世界選手権>◇4日目◇29日◇フランス・ニース

 2年ぶり3度目の優勝を狙う浅田真央(21=中京大)が、世界選手権と五輪を通じて2番目に低い59・49点と出遅れ、4位発進となった。1年ぶりの成功にかけたトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)は両足着氷で2回転半になった上に転倒。代名詞復活にかけた大舞台で厳しい結果が待っていた。村上佳菜子(17)が2位につけ、鈴木明子(27)が5位、アリョーナ・レオノワ(ロシア)が64・61点で首位となった。

 南仏の太陽のようなまばゆい笑顔は、またも見ることはできなかった。演技後、点数を待つ浅田は、口を開けたままぼうぜんとしていた。「転倒してしまったのは取り返しが付かない。今の気持ちは満足していないです」。取材陣に受け答えする時に前で組んだ手の指先は、小刻みに震えていた。悔しさが込み上げているようだった。世界選手権と五輪を通じて自己ワースト58・66点だった昨年大会に次ぐ低得点。雪辱を誓って積み上げてきた1年間の成果を発揮できなかった。

 復活を期した冒頭の3回転半が無残に散った。着氷で両足が絡み、転んで両手をついた。現地入りしてから5度の公式練習、さらに直前の6分間練習の1回も含めて、34回挑戦してすべて失敗していた。それでも「このためにやってきた。やらなかったら気持ち良くいけないんじゃないか」と演技直前に決意。佐藤コーチに「やります」と告げて向かったが、思いは実らなかった。日本での好調さは鳴りを潜め、「下降気味になってしまった。(原因は)わからないです」と唇をかんだ。

 今季は安定感に欠く得意技を封印。2月の4大陸選手権で3大会ぶりにSP、フリーともに解禁したが、惜しくも回転不足。最大目標の今大会に向け、最後の2週間は中京大で佐藤コーチが付きっきりで指導。従来は同コーチの練習拠点の横浜に通うことも多かったが、移動時間を惜しんでまで、完璧なジャンプを目指していた。それだけに失望感は深かった。

 チャンスはあと1回。フリーに逆転女王も、そして何より「ジャンプの真央」完全復活をかける。「悔いなく終わることが一番の目標です」。悔しさを喜びに変えることは、自分しかできない。【阿部健吾】