バドミントンの国・地域別対抗戦のトマス杯(インド・ニューデリー)で初優勝の快挙を成し遂げた男子日本代表が26日、成田空港に凱旋(がいせん)帰国した。史上4チーム目の団体世界一の座に就いた選手10人は、空港内で開かれた記者会見に出席。最年少の桃田賢斗(19=NTT東日本)が本来の力を発揮できる和やかムードを主将の早川賢一(28)らが作り、チーム一丸で打ち立てた金字塔だった。

 いたずらっぽい笑みを浮かべながら桃田は打ち明けた。「イメチェンの金色です。先輩たちからは“チャライ”と言われました」。離日前に染めた前髪を触った。金メダルを予期したかのような金髪を、年上の日の丸戦士は笑って歓迎してくれた。こんなムードが桃田の能力を引き出した。

 いずれも第2シングルスの第3試合に出場した5戦全てに勝利。「先輩たちがいい流れを作ってくれたから」と感謝したが、その流れを切らさず、後につないだ貢献度は高い。

 準決勝で「主要国際大会の団体男子で日本が勝つのは初めて」(日本協会関係者)という中国戦に勝利。「腰を抜かすほど驚いた」(舛田コーチ)と関係者は狂喜乱舞したが、桃田は会見でサラッと言った。「コートに入った瞬間、負ける気がしなかった。第1ゲームは落としたけど2、3ゲームは堂々と戦えた。自分のパフォーマンスをいかに出せるかだけで楽しめました」。世界6位の杜鵬宇を退け“ニューデリーの奇跡”にチームを導いた。

 エース格の田児が「高校時代のインターハイで団体戦に出た時の気持ちで戦えた」と話すように、重圧の2文字とは無縁だった。チーム内の雰囲気を「ふざける時はふざけられて、楽しかった」と話す桃田の携帯電話には、40件近いお祝いメールが入っていた。中学と高校時代を原発事故で被災した富岡で過ごした、福島の関係者からのものもある。「福島の人たちがあって今の自分がある。感謝の気持ちとして明るいニュースになればいいな」。20年東京五輪の星が、夢に向かってひた走る。【渡辺佳彦】

 ◆男子トマス杯VTR

 最終日の25日、日本がマレーシアとの約6時間の熱戦を3-2で制し、1949年に始まった伝統の大会で初の団体世界一に輝いた。準決勝の中国戦(23日)で五輪銅メダリストを破った世界ランク4位の田児が屈したが、ダブルスで世界3位の早川、遠藤組が競り勝って流れを変え、19歳の桃田が勝って“王手”。園田、嘉村組は逆転負けしたが、最後は上田が勝った。予選リーグから6連勝の快進撃で、トマス杯獲得はマレーシア、インドネシア、中国に次ぐ史上4チーム目の快挙。中国の6連覇を阻止し、5度優勝のマレーシアも破り、2年後のリオデジャネイロ五輪に弾みをつけた。

 ◆トマス杯

 国・地域別の対抗戦でテニスのデ杯、フェド杯に相当する。個人戦の全英オープンとともにバドミントン界伝統の大会。1949年にスタートしたトマス杯の名称は世界バドミントン連盟のジョージ・トマス初代会長が銀製のトロフィーを寄贈したことに由来する。