中田氏がきた。石井が興奮した。横綱朝青龍の進退をかけた初場所初日に、両国国技館が活気づいた。交流のあるサッカー元日本代表の中田英寿氏(31)や、格闘家に転向した北京五輪柔道100キロ超級金メダリスト石井慧(22)らが来場して観戦。さらに当日券358枚を求めて発売4時間前の午前4時から行列ができるなど、館内は満員札止めの大観衆で埋まった。さまざまな騒動を起こし、批判も浴びてきた朝青龍だが、人気と注目度の高さは「別格」だった。

 相撲人生をかけた朝青龍の土俵を見るために、競技の枠を超えて著名人が顔をそろえた。サッカー元日本代表の中田氏は、自分でチケットを購入して、向正面2列目の升席で朝青龍の土俵入りから観戦した。07年に朝青龍が夏巡業を休んでモンゴルでサッカーに興じて2場所出場停止処分を受けた。その時に中田氏は一緒にサッカーをしていた経緯がある。稀勢の里との気迫の一番に「休み明けで厳しい体調の中、良い試合をみせてくれた。横綱は強くないといけないが、魅せてくれる人だと思った」と感激したようだった。

 格闘家に転向した石井は大きく「朝青龍」と書かれた黒いTシャツ姿で会場に現れた。4日の総合格闘技団体「戦極」の興行でリング上から観戦に訪れた横綱に対戦を呼びかけたばかりだが、この日は友人として勝った後の横綱と支度部屋でがっちりと握手。3度観戦してすべて朝青龍が白星だったという石井は「ものすごい気迫でした。相撲の素人が(内容は)言えないが、優勝間違いなし。刺激になりました」と興奮気味に話した。

 館内は立ち見客も多数出るなど異様な熱気に包まれた。前売り券は前日までに完売。この日は当日券358枚を求めて午前4時から人が集まり始め、同8時の発売時には約450人がJR両国駅近くまで150メートルの行列をつくった。これまで朝青龍は数々のトラブルを起こし、世間の批判も浴びてきたが、場内は朝青龍が姿を現すたびに大歓声に包まれた。上尾市の矢代和夫さん(47)は「悪役を演じるくらいの方が、テレビを見たり新聞を読むのが楽しい。勝ってほしい」と話した。

 稀勢の里を寄り切ると、館内の熱気は最高潮に達した。以前は非難されたダメ押しにも、批判の声はなかった。狛江市の石村昌子さん(34)は「ヒヤヒヤしながら見ていました。できれば優勝争いをしてほしい」。江戸川区の成田喜久子さん(52)も「昔は騒動を起こしてあまり好きじゃなかったけど、まだ若いし、頑張ってほしい」。武蔵川理事長も「朝青龍が場所に出てくると雰囲気が違う」と人気と注目度の高さにあらためて驚いた様子だった。