横綱朝青龍(28=高砂)が新たな問題を引き起こした。8日、春場所(15日初日、大阪府立体育会館)に向けて滞在中の大阪を離れ、東京・代々木第1体育館で行われた「渋谷ガールズコレクション」にモデルとして出演した。しかし、日本相撲協会が出演の条件とした「けいこに支障をきたさない」という約束は、この日朝のけいこを休んだことでほごにした。千秋楽まで開催地を離れないことが常識とされるだけに、関係者からは「春場所を出場停止にすべき」の声も上がっている。

 危惧(きぐ)されていたことが現実になった。朝青龍はこの日午前、高砂部屋のけいこ場に姿を見せなかった。前日まで3日連続の出げいこを敢行。番付発表後は「2勤1休」が基本の朝青龍からすれば、マイペースだが、東京で「渋谷ガールズコレクション」に出演するこの日ばかりはけいこをすべきだった。

 角界の常識では本来、番付発表後は開催地を離れることすら良しとはされない。だが、今回は朝青龍がCM契約を結んだ炭酸飲料「ファンタ」(日本コカ・コーラ社)が協賛するイベント。日本相撲協会は特別に参加を認め、朝青龍サイドには「夕刻からのイベントでけいこ後に上京できるし、翌朝のけいこにも参加できる。けいこに支障をきたさないことが前提」とくぎを刺していた。

 しかし、朝青龍は約束をほごにした。朝青龍のマネジャーと連絡を取っていたイベントの広報担当者は「えっ」と絶句。「あれだけ言っていたのに…。これでいろんな人に迷惑がかかってしまう」と声を落とした。一方でマネジャーは「もともと今日は休む予定。昨日はけいこをしたわけですし」と、開き直った。

 朝青龍自身は昼前に目覚め、航空機で上京して午後5時過ぎに会場入り。CMキャラクターの中学生「ファン太郎」として約40メートルのステージを学生服姿で歩いた。10代の女性が占めた約2万人の歓声の中、両手を上げ、パラパラを踊り、すり足のような動きでリズムを取った。文字通りのモデルデビューに「相撲とは全然違う緊張感があった。キャーって、すごい声援だった。もう1回、やりたいね」とごきげんだったが、けいこ回避の理由を問われると「すいません。疲れてました」。さらに「明日(9日は)けいこをするのか」と聞かれると「当たり前です。このまま(大阪に)帰りますよ」と言い、質問を打ち切ろうとした。

 朝青龍の今回の問題行動に、協会の生活指導部特別委員会委員を務める漫画家やくみつる氏は「春場所は出場停止ですね。朝青龍は(サッカー問題後の)執行猶予中の身であり、協会もしっかり対応すべき。現実的には、お小言の1つぐらいで大ごとにはしないでしょうが」と指摘した。初場所での復活優勝で人気と存在感を示した朝青龍だが、周囲の甘さに乗じたわがまま、気ままな行動は以前と何ら変わっていないようだ。

 【柳田通斉】