<大相撲春場所>◇千秋楽◇29日◇大阪・大阪府立体育会館

 大関千代大海(32=九重)が大関ワーストの13敗目を喫した。大関琴欧洲(26)に寄り切られ2勝13敗。1場所15日制が定着した1949年(昭24)夏場所以降、皆勤した大関で最も悪い成績だ。不振の原因を「糖尿病」と告白したベテランは、もう1つのワースト記録「13度目のかど番」で迎える夏場所(5月10日初日、両国国技館)に進退をかける。

 体に力が入らない。千代大海は突っ張ろうとしたが腕が伸びず、あっさり琴欧洲につかまった。左差しを許し、右からおっつけられると上体が起きズルズル後退。4秒1で土俵を割った。

 13敗目。歴代最多の大関在位61場所を誇るベテランが、恥ずべき記録をつくってしまった。来場所迎える13度目のかど番も含めてダブルワースト。千代大海は「かける恥は全部かいた。(他の大関には)オレを見てこういうふうにならないでほしい。まあ、ワーストでも名前が残るのはいいんじゃないの」と苦笑いするしかなかった。

 負け越しが決まった10日目には「右の脇腹を痛めているけど悔しさを体にたたき込むために、休場はしない」と言い切った。千秋楽のこの日は「実家(大分市)の両親から『立てないような痛みじゃなければ、最後まで出場しなさい』と励まされた」という。その上で、1年前から糖尿病で苦しんでいると明かした。

 千代大海

 ごまかしてきたけど、夜中も1時間ごとに小便に行きたくなって、トイレに行くと1リットル近く尿が出る。場所前から比べ10キロ体重が落ち、足はイスに座って両足で組めるほど細くなった。朝のけいこから頭がボーッとして、場所に入っても続いている。

 糖尿病で土俵を追われた力士は数知れない。食事療法に取り組めば体重が減り、パワーも落ちる。千代大海も「野菜ばかり食ってたら力が出ない」と悩んでいる。だが、土俵に立つ以上は結果が求められる。

 来場所は負け越せば初めて大関から陥落する。師匠の九重親方(元横綱千代の富士)は「当然厳しくなるが、悪いところを治してやるしかない」。そして千代大海は「体が戻ればまだやれる自信はある。あらゆる準備をして出て、それでもダメならその時に考えます」。覚悟を決めた闘魂大関が、夏場所に力士生命をかける。【柳田通斉】