<大相撲秋場所>◇千秋楽◇29日◇東京・両国国技館

 関脇豪栄道(27=境川)が、大関昇進への足掛かりとなる11勝目を挙げた。西前頭4枚目の魁聖(26)を寄り切りで下した。昨年夏場所以来、2度目の殊勲賞も獲得。関脇では過去2度2桁勝利を挙げたが、翌場所は8勝以下で大関とりへの足固めに失敗してきた。苦い経験を糧に、11月10日初日の九州場所では「連続2桁勝利」を目指す。

 負けられなかった。格下の魁聖に上手を許し、土俵際では投げを打たれた。だが、豪栄道は食らいつく。回り込んで左下手を深く取り直すと、休まず逆襲。全身の力で寄り切った。10日目に全勝の白鵬を止めた勝利とはまた違う、価値のある11勝目。「まあ何とか。最後しっかり勝って、とりあえずホッとしてます」。直近3場所で33勝が昇進目安の“大関とり”へ、起点作りに成功。北の湖理事長(元横綱)も「11番は大きい」と評価した。

 昨年夏場所から続く関脇連続在位は、歴代3位の9場所。その間の2ケタ勝利はこれで3度目だ。過去2度は、翌場所で8勝以下に終わり、大関昇進への足固めはできなかった。「気負い過ぎていたかも」と自己分析する豪栄道にとって、次の九州は「三度目の正直」を目指す場所。再度2ケタ勝てば、来年初場所で大関とり、故郷大阪の春場所で新大関…と夢はふくらむ。「そうなれば最高ですけどね」と理想の展開を頭に描いた。

 元大関栃東の玉ノ井親方は、豪栄道について「右のおっつけができるようになった」と成長点を挙げた。同親方は関脇時代、連続2ケタ勝利に4度失敗したが、5度目で成功するとそのまま大関昇進につなげた。「経験は大事。悔しいと思って試行錯誤することだ。僕は武蔵川部屋に出稽古して横綱(武蔵丸)とやった。豪栄道も強い力士と胸を合わせれば、それだけ強くなる。力は十分ある」と期待の言葉を口にした。

 27歳になった豪栄道自身、年齢的な危機感が発奮材料になっている。「そんな若くない。30を過ぎてから強くなるとも思ってない。20代のうちに悔いのないようにやっていきたい。やれることをしっかりやって、来場所の初日を迎えたい」。同じ過ちは何度も続けられない。2度目の殊勲賞に喜んでいる暇もなく、鍛錬を続ける。【木村有三】

 ◆大関への道

 昇進目安は三役で直近3場所33勝。直近で昇進した鶴竜も11年九州から3場所で33勝している。しかし、32勝以下での昇進も珍しくない。1場所15日制となった49年以降、大関に昇進した63人のうち20人は32勝以下だった。11年九州場所後に昇進した稀勢の里は32勝。最も勝ち星が少ないのは鏡里、初代若乃花、北葉山、北の富士の28勝。