<社会人野球:日本選手権:JR九州6-2日産自動車>◇21日◇10日目◇準決勝◇京セラドーム大阪

 今季限りで休部が決まっている日産自動車(神奈川)がJR九州(福岡)に延長13回タイブレークの末敗れ、創部50年の歴史に幕を下ろした。

 整列した日産自動車ナインがスタンドに向かって一礼する。紙テープが投げ込まれ、拍手がわき起こった。「これで終わらないぞ!」。そんなファンの声援にさらに深々と頭を下げた。27年間在籍した久保恭久監督(49)は「これで50年の歴史が閉じたと思うと…。せめてあと1日生き永らえさせてほしかった」と声を詰まらせた。

 あと1歩だった。延長10回を戦っても決着がつかず、1死満塁から始めるタイブレーク方式の延長戦に入った。12回表、秋葉知一投手(27=国士舘大)が無失点でしのいだ。しかしその裏に1点を奪えず、意気消沈した。13回表に4点を失うと、反撃する力は残っていなかった。秋葉は「最後にマウンドに立てて誇りに思う」号泣しながら、精いっぱい胸を張った。

 今年2月、会社の経営合理化の一環として今年限りでの休部が発表された。創部50年のメモリアルイヤーが、皮肉にもラストイヤーになった。今夏の都市対抗は準決勝でトヨタ自動車に敗れたが、今大会1回戦でトヨタ自動車を奇跡的な逆転サヨナラ勝ちで破りリベンジ。2回戦ではパナソニックと優勝候補を相次いで撃破した。

 しかしこの日で“夏”は終わった。胸に青い鳥をあしらったユニホームは役目を終える。「我々の胸の青い鳥はダイヤモンド旗にとまれなかった。でも我々の頑張りはみなさんの胸に刻めた。日産を見捨てないでくれて、感謝しています」という久保監督の声は震えていた。試合後、ナインは折り紙で作られた黄色の“メダル”を胸にかけていた。青柳大輔内野手(34=横浜商大)の娘美咲ちゃん(6)から全員に贈られた。バスの前で記念写真を撮り、話す輪はなかなか解けなかった。名門が、ラストランのゴールテープを切った。【亀山泰宏】