首位決戦の2戦目は、阪神の先発・伊藤将が4回6失点。初回に4失点したように、あっさりと試合は決まってしまった。ルーキーでありながらここまでローテーションで投げてきた伊藤将が、なぜ試合を作れなかったのかを考えると、今後の課題が見えてくる。この先、何年もプロの世界で飯を食っていくために何が必要なのかを助言してみたい。

先頭打者の松原に対し、2球を投げた時点で苦しいピッチングになることが予想できた。初球、外角低めのカットボールがボール。2球目は真ん中低めのツーシームがボールになった。低めに投げようとする意識が伺えたが、ボールを置きにいくような投げ方で、これでは打者は怖くない。球を見極められて四球を与えてしまった。

ピッチャーは連続四球を与えたくない。「フォアボールの後の初球」は打者にとってセオリーで、2番の坂本は初球のど真ん中のツーシームを左翼線へ二塁打。変化球を投げるときは特に腕が振れていない。球威のあるタイプではないし、これは打者を抑える“根拠”がない。苦しいピッチングになると思ったが、初回に4失点し4イニングで6失点。首位チームと2位チームの戦いは、序盤で決まってしまった。

この試合で気になったのは、右打者の内角へ真っすぐが投げられないこと。打者に当ててしまうことを気にして甘くなるのだろうが、これでは抑えようがない。初回のウィーラーに打たれたタイムリーは内角を狙って真っすぐがど真ん中の高めに甘くなったもの。これで捕手の梅野も内角に投げられないと悟ったのか、右打者の内角へはカットやツーシームばかり。これでは抑えようがない。

まず、立ち上がりが悪いのであれば、もっと試合前のブルペンで投げ込み、せめて置きにいくような腕の振りにならないような状態に仕上げるべき。立ち上がりが悪い先発投手はいるが、そういう投手は投手としての絶対能力が高い。現時点での伊藤将の能力では、立ち上がりが悪ければ先発ローテーションを任せられなくなる。

右打者の内角に投げるのが苦手なら、ブルペンで誰かに打席に立ってもらい、内角に投げる練習をしなければいけない。打者に当てるのが悪いと思うようではこの先、プロの世界で飯を食っていけない。自分が生き残るために心を鬼にして投げる必要がある。

立ち上がりをよくするための工夫と、右打者の内角へ投げる技術が、今の伊藤将には必要。ここまでは「なんとなくまとまっている左腕」ということで、ローテーションを守れていたが、打者も慣れてくるし、研究もしてくる。ブルペンで投げ込み、この先もプロの世界で生き抜くための“武器”を身に付けてほしい。(日刊スポーツ評論家)