中日小笠原が楽天を7回4安打無失点に封じた。好投したのは確かだが、完璧かと言えばそうではない。中身を見れば、多少の苦しさはあった。そこで傷口を広げなかったバッテリーの勝利と言える。逆にそのほころびを察知し、チームとして狙えなかった楽天打線の力量不足に映った。
小笠原はこの日、ナックルカーブの制球がいまひとつだった。3回までに12球を投げストライクは2球。コース、高低ともにカウント球としての信頼性は低かった。ここでもう1つの軸になる変化球としてチェンジアップへの比重を上げる。
全109球のおよそ35%がチェンジアップ。打者の左右に関係なく有効にカウントを奪った。1点リードの6回2死一、二塁で4番島内を初球チェンジアップで中飛に抑え、ほぼ勝ちへの流れを確実にした。さらに、いまひとつのナックルカーブの代わりに中盤以降はスライダーを多用していく。
スライダーは左打者の外へ逃げていく。この日の軸となったチェンジアップは左打者の内に入っていく。ナックルカーブにこだわらずスライダーへシフトしたことで、左打者を幻惑させる組み合わせになったところにも、捕手木下の判断の良さがうかがえた。
こうして細かく見ていくと苦心しながらのピッチングだったことがうかがえる。この背景を考えると、楽天打線がもう少し球種1つずつを吟味していれば、攻略の糸口は探れたのではないか。ナックルカーブが不調、チェンジアップを多投する傾向を把握し、チームとしてチェンジアップを狙う気持ちがあれば、突破口は見いだせたと感じた。しかし、私が見た範囲ではそうした意図を感じるスイングは見受けられなかった。
シーズンを通してローテを守る左投手には、なくてはならないものがある。困った時に頼りになる3球種だ。例えば9回2死2ボールからストライクを取れる球種を3つ持っているかどうか。この日の小笠原なら真っすぐ、チェンジアップ、スライダーだった。
3つには理由がある。3つのうち1つ信頼性が低くても残り2つあれば、相手に的は絞らせない。2つしかなければ、1つ不調なら残り1つが狙われる。この試合の小笠原は不調の球種にこだわらず、シフトできたところが光った。そして、全体を俯瞰(ふかん)した木下の配球は冷静だった。(日刊スポーツ評論家)




