山本由伸投手は4回1安打無失点と好投した。8三振を奪うなど、非の打ちどころがない結果に見える。特に変化球はフォークもカーブも天下一品で全く心配はない。間違いなく国際舞台で通用する。捕手の中村もいいリードをしていた。だが、直球は球速こそ最速155キロと出ていたが、一流だからこそ、修正点を指摘したい。左打者に対してもだが、特に右打者の外角への直球がシュート回転していたことが気になった。外を狙って中に入る球は軽く、飛距離が出るので危ない。

山本クラスであれば、オーストラリアを抑えたからいい、とはならない。1次ラウンドは勝って当たり前で、本当の勝負は米国に行ってからの準決勝、決勝だ。米国でも始まったC、D組の試合を見ていたが、球速だけで言えば、山本程度の投手はゴロゴロいる。向こうの打者は、100マイル(約161キロ)ぐらいでもバンバン打つ。だからこそ、シュート回転には気をつけたい。

今年から始めた、下半身を使わないクイックのようなフォームが正解かどうかは別として、体が大きくなくてもパワーピッチングができるのは若さの証拠だ。先日打たれたダルビッシュにも言えるが、まだ調整段階だろうから、修正能力に期待したい。

打線では村上が苦しんでいるようだが、他の打者が好調な今は打たなくてもいい。4番というのは皆が打てない時に打てばいいのだ。3番の大谷を歩かせて勝負されるなど、屈辱を味わっているだろう。周りがそろって打っていて、自分だけ打てなければ、焦って力が入るかもしれない。だが、1次ラウンドの相手には、村上が打たなくても勝てる。どっしり構えていればいい。

準々決勝以降は、レベルの高い投手が出てくる。好投手からも打てなければ3冠王は取れない。自信を持って、下を向かず、胸を張っていればいい。真価を問われるのは、もう少し後だ。4番打者に4打数4安打はいらない。他の誰も打てない時、どうしても1本ほしい時に、打てばいい。日本は村上の4番を変えてはいけない。(日刊スポーツ評論家)

日本対オーストラリア 4回表日本無死満塁、三振に倒れベンチへ引き揚げる村上(中央)。左は栗山監督(撮影・横山健太)
日本対オーストラリア 4回表日本無死満塁、三振に倒れベンチへ引き揚げる村上(中央)。左は栗山監督(撮影・横山健太)
日本対オーストラリア 6回表日本1死、左前打を放つ村上(撮影・前田充)
日本対オーストラリア 6回表日本1死、左前打を放つ村上(撮影・前田充)