4位の巨人にとって、絶対に勝たなければいけない試合だった。

主砲の岡本和、好調の梶谷が体調不良で離脱した苦しい試合だが、6回裏に逆転し、7回裏も追加点。願ってもない試合展開で2点をリード。しかし8回表2死一、二塁、代打・末包に痛恨の逆転3ランを浴びて逆転負け。劣勢の中で勝てそうだった試合を最悪な形で落としてしまった。

1発だけは打たれてはいけない状況だった。代打の末包に対し、左腕の高梨は初球の内角低めのスライダーで空振りを奪った。真っすぐにはめっぽう強い末包だが、変化球にはもろさがある。初球にボールになる変化球から入るのは間違ってはいない。一方で苦手な球に対して初球からスイングするのは「狙っていた」と考えられる。そんな状況の中、2球目と3球目は外角への直球がボール。バッティングカウントになって、初球に空振りを奪った内角低めへのスライダーをホームランされた。

あまりにも単純な配球だった。打者からすれば、1ストライクから外角へ2球ボールが続き、思い切って空振りした内角球を狙いにいける。苦手とはいえ、球筋は見ているし、内角は1発の危険度も高い。これが追い込んでからの状況で、狙い球を絞りにくくなっていればよかったが「カウントが苦しくなったから、空振りさせた球でカウントを整えたい」という単純な発想としか思えなかった。

デビッドソンの1発も、もったいなかった。6回表、先頭打者でデビッドソンを迎え、初球の内角シュートを狙い打ちされた。先発の山崎伊は第1打席でも4球中、外角の真っすぐが3球で内角のシュートが1球だった。「外は真っすぐで、内はシュート」の単純な発想が成り立ってしまう。これでデビッドソンは18本塁打中、半分になる9本が巨人戦になった。

デビッドソンのホームランの内訳は分からないが、死球は6死球のうち巨人がリーグトップの3個を与えている。内角を厳しく攻めているのだろうが、裏を返せばそれだけ「内角を攻めてくる」と相手は意識している。打者にもよるが、内角攻めの基本は警戒させ、ここ一番の勝負で安全度が高い外角勝負をしやすくするためのもの。勝負どころの試合終盤で警戒されている球を投げていては意味がなくなってしまう。

大城卓の配球だけの問題ではない。末包とデビッドソンの1発は、いずれも厳しいコースだった。打った打者が見事ではあるが、投げたピッチャーもスコアラーも反省が必要だろう。シーズン終盤の戦いで、同じような過ちを繰り返しているようでは、CS出場は難しくなるだろう。(日刊スポーツ評論家)

巨人対広島 6回表広島無死、デビッドソン(後方)にソロ本塁打を浴びる山崎伊(撮影・宮地輝)
巨人対広島 6回表広島無死、デビッドソン(後方)にソロ本塁打を浴びる山崎伊(撮影・宮地輝)