耳に残る実況がある。

「これはもう、奇跡とは言わせない!」

9月28日、ラグビー日本代表がW杯で強豪アイルランドを撃破した際の実況。このとき、心の底から震えた。NHK豊原謙二郎アナウンサーの熱意が伝わってきた。

奇跡なんかじゃない-。今の阪神も、そうだ。シーズン最後に6連勝フィニッシュで大逆転CS進出。CSファーストステージは執念の継投で2位DeNAを撃破。ここにきて調子を上げていることは確かだ。

矢野監督は5日のCS初戦の試合前、ナインに告げた。「ここ(横浜)に来たことが奇跡だと周りは言うけど、日本一になって初めて奇跡。ここから奇跡を起こそう」。可能性のある限り、死力を尽くす。諦めなければ、勝負は最後の最後までわからない。

DeNAに2勝1敗で、CSファイナルに駒を進めた。苦しさを乗り越え、歓喜に変えた。着実に1歩ずつ-。どんな兵でも、団結すれば強くなれる。「奇跡」と呼ぶのは、日本一になってから。まだまだ夢を追える立場にいる。ゴールは、ここじゃない。【阪神担当=真柴健】