プロフェッショナルと呼ばれる人たちがいる。その道を超一流で極める者。西武でいえば、ボールを遠くに飛ばす力に関しては、中村、山川。守備の職人といえば、源田。バットコントロールなら、栗山、森。そんな、すごみのある選手が頭に浮かぶ。

成績、数字が明確に出るものは分かりやすいが、そうでないものもある。

ムードや雰囲気。特にチームで戦うスポーツにおいては、重要な部分を持つが、それを作り出す上で、熊代聖人外野手(32)はスペシャリストだろう。ファンの間では有名な「みんなええか」から始まる、ありがたい「訓示」に代表されるように、球界屈指のムードメーカーである。

熊代は言う。「ずっとベンチいるつもりはないんですけど」。ただ、途中出場が主の立場だからこそできる役割、究極の貢献があるとも知る。

「自分たちの立場、役割はしっかり分かって、より一層チームを盛り上げられるようにしていかないといけない。若い子がやりやすくプレーをできるような雰囲気をつくっていきたい」

最下位からの巻き返しへ、辻監督は今、若手が殻を破って台頭することを期待している。ただ、それが現実となるには、若手が本来の実力を発揮できるような土壌、雰囲気が必要。その意味では、熊代はキーマンの1人といえるかもしれない。21年は投手、捕手以外のポジションも守った。数字以上の貢献も際立つ。

最後に球団公式ユーチューブチャンネルにアップされていた“熊代先生”のありがたい訓示の一部を紹介する。秋季練習の最終日のこと。

「明日からオフに入るけど、みんな間違っても冬眠しないように。ライオンは冬眠しないから。オスライオンっていうのは、群れから外れて1人で行動している時に強くなる」

一冬越えて、ライオンズはどんな集団に生まれ変わるか。ムードだけでは勝てないが、ムードが悪ければ勝てない。強い組織には湿る気配、暗い空気を吹き飛ばせる人物が決まって存在している。【西武担当=上田悠太】