巨人の若手投手陣に“兵庫旋風”が吹き荒れている。今季初勝利を挙げた20年ドラフト1位、2位コンビの平内龍太投手(23)と山崎伊織投手(23)に加えて、新守護神として絶対的な存在感を示し続けている昨年のドラ1右腕・大勢投手(22)。98年から99年に兵庫で生まれた3投手が今、東京を本拠地にする巨人の投手陣を支えている。

原監督が巨人コーチに就任が決定し、指導者としての歩みを始めた98年前後に3人が誕生した。平内は98年8月1日に生まれた。剛速球投手として明石市内で名をはせた。魚住東中時代の3年夏、最後の公式戦では2試合連続ノーヒットノーランという逸話も残る。

山崎伊は同年10月10日に生まれた。小学校時代には帰宅したらすぐにランドセルを放り投げ、バットとグラブを手に近くの公園や学校のグラウンドに飛び出していく。ゲームよりも、坂本勇人の背番号6のユニホームが大好きな、活発な野球少年だった。

明石市で育った同学年の右腕2人は自然と顔見知りになった。小学生時代から知り合いで、平内の通った魚住東中と山崎伊の通った明石商は道路を挟んで隣接しているほどに近い。

高校時代には対戦経験もあった。3年の夏、神戸国際大付のエースだった平内は、県大会準々決勝で敗戦。その時、対戦相手の明石商で「1番左翼」として3安打を放ったのが山崎伊だった。それぞれ大学入学前にも連絡を取り合い「どっちが150キロ先出るか勝負しようぜ」と約束した仲だった。

明石市から北へ約50キロ離れた多可町出身で1学年下の大勢も、2人の縁に絡み合う。平内が山崎伊のいる明石商に敗れる2試合前の4回戦。2年で西脇工の「4番左翼」で2安打1打点を記録。延長10回という接戦の末、1点差で平内が先発した神戸国際大付に敗れたが、4番として意地は見せた。山崎伊とは中学時代、同じ県内のボーイズに所属。西脇工で1学年上の捕手が、中学時代に山崎伊とバッテリーを組んでいた選手だった。

時は流れて2022年。永遠のライバル、阪神のお膝元でもある兵庫で生まれ育った3投手が、そろって巨人の投手陣を支える。平内、山崎伊がプロ初白星を挙げれば、大勢は新守護神で圧倒的な存在感を示し続ける。山崎伊の言葉を借りれば「不思議な感覚です」。集結した“兵庫トリオ”が、巨人に旋風を巻き起こしていく。【巨人担当=小早川宗一郎】