日本ハム新庄剛志監督(50)は、いつも無邪気にベンチを飛び出す。選手がプロ初安打をマークすると、記念球を相手野手から受け取りに出てくるのが恒例行事となった。そのボールを掲げて球場内へのアピールも欠かさない。「プロ野球人生のスタートだから」と、その瞬間の祝福ムードをあおり、敵味方関係なくファンから拍手が起きる。“回収係”を率先して務める新庄監督が繰り広げる光景は、試合中ではあっても、なんだか、ほほ笑ましい。

そんなBIGBOSSは今季、プロ初安打の記念球をいくつ回収したのか。

最初の回収活動は4月8日の上野響平内野手(21)だったが、“回収係”としての認知度はまだなく、相手野手も新庄監督へ向かってボールを返してはくれなかった。それでも、すぐに記念球を手にして場内のファンへアピールしてメモリアルシーンを盛り上げた。

直接回収は2個目となった4月27日の梅林優貴捕手(24)で初成功。ここで相手チームにも“回収係”として認知された。プロ3年目の2選手に続いて、5月は水野達稀内野手(22)、上川畑大悟内野手(25)のルーキーコンビ。7月は3年目の宮田輝星外野手(24)、高卒新人の阪口楽内野手(19)、2年目の古川裕大捕手(24)の3選手。そして、最新の活動は8月7日、3年目の片岡奨人外野手(24)がマークした初安打ボールを回収した。

振り返れば、BIGBOSSは8個も記念球を回収していた。つまり、8月12日時点で8選手もプロ初安打をマークしたことになる。昨季も万波中正外野手(22)、五十幡亮太外野手(23)、今川優馬外野手(25)、細川凌平内野手(20)と野手では4選手(投手では加藤貴之投手=30も)が記録したが、さらに上回る異例の多さだ。

チーム再建を目指して、故障者と高卒新人投手以外は全員1軍で起用してきた新庄監督が、まいてきた種は着実に芽を出し始めている。あとは、どう大きく育てていくのか。「ここからはもう、本人次第」とも話すが、背番号1のここからの手腕にも注目したい。そして、支配下の野手でプロ初安打がまだなのは、ここまで7打席に立った高卒新人の有薗直輝内野手(19)だけ。BIGBOSSにとっては今季最後の大事な回収作業が、まだ残っている。【日本ハム担当 木下大輔】