約60年間携わったプロ野球の世界を離れ、今年ほどゆっくりと高校野球の試合を見たことはなかった。予備知識として、事前に好投手の名前は聞いてはいたが、現状の評価と課題、将来性など、感じたことを記していく。

現時点で、高校生NO・1の評価は中京大中京の畔柳君だ。力強い真っすぐを投げ込み、現状の高校生では連打は難しいのではないか。攻め方を知っているし、投手らしい投手だ。

フォーム的には軸の移動がもう少し我慢でき、肩の入れ替えがスムーズにできるようになればもっと安定する。誰にも当てはまるが、もう少しストレートと変化球のコントロールが身につくと大変な投手になる可能性を秘めている。

中京大中京・畔柳(2021年3月29日撮影)
中京大中京・畔柳(2021年3月29日撮影)

市和歌山の小園君は、完成に近い投手だと感じた。クイックもできているし、持って生まれたセンスがいいのだろう。駆け引きなど感性が磨かれれば、さらに良くなる。天理の達君はまだ線が細く、将来的に体力、体の部位などができ上がってくれば技術と正比例して成長していくタイプ。オーソドックスな投球フォームでバランスも良く、投球時に左足を高く上げるがバランスは崩れていない。

市和歌山・小園(2021年3月26日撮影)
市和歌山・小園(2021年3月26日撮影)

仙台育英の伊藤君は、投球フォームの始動からリリースまでの体の使いが非常にうまい。特に目をひいたのが軸の移動の良さで、球持ちが良く、体重をボールに乗っけるのも上手だった。広島新庄の花田君も面白い素材。直球のコントロールの良さに加え、左打者の内角に投げるカットボールは、ロッテの唐川侑己と質が似ている。課題はスタミナとパワーだろうか。

仙台育英・伊藤(2021年3月29日撮影)
仙台育英・伊藤(2021年3月29日撮影)

自らの特徴を生かした投手も目に留まった。県岐阜商の松野君は、プレートの一塁側を踏み、テークバックでトップの位置に入った時は体を正対しながら、右打者のインサイドに押し込んでいく投法。同じようなタイプに横浜(現DeNA)時代の教え子の盛田幸妃、元巨人の西村健太朗が挙がる。ともにシュートで球界に名を残した投手だ。注意するポイントは、外角へはボール球をうまく使うことだ。

県岐阜商・松野(2021年3月23日撮影)
県岐阜商・松野(2021年3月23日撮影)

その他にも、専大松戸の深沢君はセンスの良さを感じさせ、東海大相模の石田君は変化球を自分の感覚で操ることができる。大阪桐蔭の松浦君、関戸君は体格に恵まれ、同校OBの辻内崇伸のようにパワーを感じさせる投手だった。いずれの投手も、この先のステージに進む上で課題はあるが、どう伸びてくるか楽しみだ。

専大松戸・深沢(2021年3月25日撮影)
専大松戸・深沢(2021年3月25日撮影)
東海大相模・石田(2021年3月29日撮影)
東海大相模・石田(2021年3月29日撮影)
大阪桐蔭・松浦(2021年3月23日撮影)
大阪桐蔭・松浦(2021年3月23日撮影)
大阪桐蔭・関戸(2021年3月23日撮影)
大阪桐蔭・関戸(2021年3月23日撮影)

今大会の特徴は、体ができているように見える左腕が股関節、および下半身の使い方が下手で、上半身は柔軟度が少ないため、手投げのように見える子が多かった。このようなタイプは腕のしなりが少ないため、淡泊で球持ちが悪い。いわゆる「1、2、3ドーン」のリズムで、文字で表現するなら「1、2~の、3」という間合いができれば、ぐっと良くなっていく。(次回は今月下旬掲載予定です)

◆小谷正勝(こたに・ただかつ)1945年(昭20)兵庫・明石市生まれ。国学院大から67年ドラフト1位で大洋入団。通算10年で24勝27敗。79年からコーチ業に専念。11年まで在京セ・リーグ3球団で投手コーチを務め、13年からロッテで指導。17年から19年まで再び巨人でコーチを務めた。

小谷正勝氏(19年1月撮影)
小谷正勝氏(19年1月撮影)