首都大学野球1部の日体大2年生が世界へ挑む。西山チアゴ内野手(20)がWBCブラジル代表に選ばれた。日本の大学生では全代表を通じて唯一、本戦メンバー入り。3大会ぶりの本戦進出を決めたチームを支える。「カナリア軍団」の異名を持つサッカー王国に野球を根付かせるべく、50メートル走6秒0の俊足で役目を果たす。
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ブラジルはサッカーだけじゃない。野球の本場アメリカで力を試す時がきた。3大会ぶりの本戦出場メンバーに名を連ねた西山は「本当にうれしいです。今からワクワクしています」と胸をときめかせた。
ブラジル国内では野球はいまだマイナースポーツ。競技人口は多く見積もっても数万人程度だ。この現状を打破する上でWBCは絶好の機会だ。「WBCの結果がもたらすものは大きいと感じてます」と訴えかけた。日系ブラジル人の父は野球経験者で、日系ペルー人の母はソフトボール経験者。野球を始めて間もない7歳の頃に転機が訪れた。
13年WBC第1ラウンド。ブラジルは日本相手に7回まで1点リードの善戦を演じた。「最後は負けましたが、日本に勝つんじゃないかと思って、もうハラハラドキドキして」と胸を打たれた。中学まではサッカーとの両立だったが、あの時の興奮が忘れられず野球を選ぶことにつながった。
とはいえ、ブラジルではサッカーが絶大な人気を誇る。老若男女幅広い世代から受け入れられた「国技」。路上サッカーに明け暮れるブラジル人を探すことは容易でも、バットとグラブを持って野球をプレーする人を目にすることはほとんどない。日本では誰もが知るドジャース大谷翔平投手(31)ですら「超大型契約を結んだ時にやっと知ったというブラジル人がほとんどです」と違いは大きい。
競技環境は決していいとはいえないが、野球をしたい若者を後押しする施設もある。西山も平日はヤクルトの現地法人「ブラジルヤクルト商工」が手がける施設でノックやバッティング練習をしながら、週末は地元の硬式野球クラブで実戦経験を重ねた。地道な努力が実りユース世代の代表に絡むまでに成長し、父の仕事の関係で2年前に来日。約300人の部員を抱える日体大ではいまだ公式戦出場はないが、走攻守に優れたスイッチヒッターとして首脳陣の期待は高い。
代表の指揮を執る松元ユウイチ監督(45=ヤクルト・ヘッドコーチ)からは「走塁とバント練習はしっかりやっておけ」と連絡を受け、ここぞの場面での途中起用を想定しながら準備する。既に日本を離れ母国ブラジルに戻り、チームキャンプに合流。来月から始まる本戦へと備えている。同6日(日本時間7日)の初戦では、MLBスター選手ぞろいの優勝候補の米国と対戦する。「ジャッジ選手やスキーンズ選手と対戦したい。活躍できたら人生が変わる」。晴れ舞台は間もなくだ。【平山連】
◆WBCブラジル代表 ヤクルトのヘッドコーチを務める松元ユウイチ氏が指揮を執り、3大会ぶりの本戦出場。代表メンバーには西武ボー・タカハシ投手、阪神伊藤ヴィットル通訳、社会人ヤマハのドラフト候補左腕沢山優介投手ら日本にゆかりのある選手たちが名を連ねた。5チーム総当たりの1次ラウンドはB組(米国、メキシコ、イタリア、英国、ブラジル)に所属。日本時間3月7日、米ヒューストンで優勝候補の米国との初戦を迎える。
◆西山チアゴ(にしやま・ちあご)2005年11月20日、ブラジル・サンパウロ市生まれ。6歳で野球を始める。父の仕事の関係で来日し、ペルー・ラウニオン高から日体大に進学。日本語、英語、スペイン語、ポルトガル語と4カ国語を操る語学力が強み。趣味はビリヤード、サッカーのコリンチャンスFCのチェック。好きな食べ物はラーメン。175センチ、76キロ。右投げ両打ち。




