ソフトバンク内川聖一内野手(35)が5月9日の西武戦で通算2000安打を達成したニュースを興味深く読みました。

 横浜市営地下鉄のブルーラインに乗っている内川を見かけ「内川でも地下鉄に乗るんやな」と思ったことはありますが、直接、取材したことはないし、ホークス自体、担当したこともありません。

 それでもある種の感慨が浮かんだのには、ちょっとした理由があるのです。

 広島カープの担当記者だった00年のドラフトのことです。当時、広島が狙っていたのがほかならぬ大分工の内川でした。「いい選手だ」。関係者を取材しても内川の名前ばかりが出てきました。

 同時に横浜も獲得を目指していました。高校時代にかかとを故障していた内川には大学に進むのでは、という情報もあり、結局、広島は指名を回避。内川は横浜入りしたのは知られる通りです。

 ところが、です。

 横浜で中心選手になった内川が10年オフにFA宣言したとき、ソフトバンクとともに手を挙げたのが広島だったのです。これは球界ではちょっとしたニュースでした。

 無名の選手を獲得、他球団の追随できない育成力で、戦力として育て上げることで知られる広島。国内でのFAで他球団の選手を獲得したことは過去も現在もありません。手を挙げたことすら、このときだけです。

 先に書きましたが、内川はドラフト時にある意味でフラれている選手です。にもかかわらず前例のないFA獲得の名乗り、でした。

 それだけほしいということなのか。当時は不思議にすら思ったものでした。結果はこれもご存じの通り、内川は故郷・大分に近い福岡の球団を選び、広島はまたしてもフラれる結果になりました。

 そんな内川の大記録です。広島サイドがどう思っているのか。

 当時もいまも広島球団の指揮を執る松田元オーナーの話を聞く機会がありました。

 「そりゃあ喜んでいるよ。それだけの選手だったということだからね」

 オーナーの感想は単純明快でした。あの広島がFAで獲得を目指した選手。FAで移籍しても成功しないケースもありますが、横浜時代同様、ソフトバンクでも活躍。大記録を打ち立てた内川は、同時に広島のメンツも立てたのではないか。そんなことを思っています。