ほぼ2カ月ぶりに日本ハム進藤勇也捕手(22=上武大)のプレーをじっくり見させてもらった。意識の高さを感じつつ、思わぬプレーを目の当たりにして、まだまだ修業の最中にあることを、あらためて実感した。

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4月に進藤のプレーを見た時は、走者一、三塁で座ったまま投手に返球する進藤の動きが気になったと指摘させてもらった。当然、そこはチェックしようと考えていた。どんな動きをするのかなと。

すると、一塁に走者を置き、打席には左打者が入った状況で、進藤は1球受けるごとに立ち上がり返球していた。走者にしっかり意識が向いており、決して目をそらすまい、という意欲が伝わってきた。キビキビした動きを見ていると、前回の時との違いがはっきりして、どこかうれしい気分になった。

決して私の指摘を元に、こうしたメリハリのある動きになったとは思わない。恐らく同じような指摘をコーチや、チームメートから受け、あるいは自分で感じたのだろう。そして、改善しようと努めているその姿勢が、見ていてすがすがしかった。

走者をケアして、1球ごとにしっかり立ち上がって返球することは、漫然と座ったまま返球するよりも、はるかにいい。基本的なことではあるが、私が見た印象では、すでに進藤にとって習慣になりつつあるように映った。今まで覚えていた違和感もなくなった。1つ、成長したと言えるだろう。

そんな思いで試合に見入っていると、ちょっと珍しい場面に出くわした。3回1死一、二塁。フルカウントでのシーンだった。投手が投球動作に入ると、フルカウントによって走者はスタートを切った。私にはやや遅いスタートに映った。

投球がボールならば四球で満塁。ストライクならば打者は打つ、そういう状況で、投球は内角真っすぐで、判定はストライクだった。打者は見逃し三振。進藤が落ち着いて三塁に送球すれば、楽々アウトのタイミングだった。ゲッツーでチェンジだな、そう思った瞬間、進藤はボールを受けたまま動かない。

どうしたんだと、驚きの思いで見ていると、進藤はおよそ2秒から3秒たって、ようやく三塁に送球したが、さすがに遅すぎた。私は不思議な思いでその後を見守ったが、2死二、三塁から次打者に3ランを浴びてしまった。

三振ゲッツーでチェンジのはずが、3ランだ。最悪の展開に、私の方があぜんとなった。いったいどうして三塁への送球が遅れてしまったのか。考えられることは3つある。まず、自分でボールと判断した可能性がある。続いて球審のコールが若干遅れた可能性も否定できなかった。

この日、私は球場内の部屋で見ていたので、球審のコールがはっきり聞き取れなかった。あとで、チーム関係者に確認してみたが、「そう言われてみると、多少遅かったかもしれません」ということだった。つまり、明確にコールが遅かったとは言いづらい状況だった。

最後に、見逃し三振を奪い、進藤が「ヨシッ」と、ホッとしてしまった、ということだ。だが、この3つの可能性は考えられるが、どれも明確なことは言えない。通常ならば、左打者を迎え、進藤の視線の先に二塁走者がいる。否が応でも、二塁走者のスタートは目に入るはずで、見落とすはずがなかった。

不可解なプレーから、最悪の3ランとなってしまった。こんなこともあるのかと、先ほどまでのすがすがしい気持ちから、やや落胆した思いで進藤の動きを見ていた。3ランを浴びた後、3アウト目を奪いチェンジとなると、進藤はダッシュでベンチに戻った。

本来なら投手に歩み寄って、二言三言、何か声をかけるべきタイミングだ。捕手の立場からすれば、三塁送球が遅れ、投手に対して申し訳ないという思いもあって当然だろう。ならば、どんな言葉になるかは捕手次第だが、少なくとも声をかける配慮は必要だった。

それすら忘れてしまったということか。それだけ、進藤にとっても尾を引くプレーになってしまったのだと、私は理解した。

まずは三塁送球が遅れたことはしっかり反省しなければならない。何か理由はあったとは思うが、きっちり準備していれば、何てことはないプレーだった。

この一瞬の判断の遅れ、一瞬の気の迷い、0コンマの世界の中に、思わぬ失敗が潜む。えっ、こんなことが、こんなところで、というプレーが時として現実になるのが試合だ。理路整然と説明がつかない不思議なプレーも、野球には必ず起こる。

これを機に、再び進藤には学んでほしい。フルカウントから走者がスタートを切った時、必ず送球動作に入ることを。極端なことを言えば、たとえボールでも、送球動作に入っていれば、何の問題もない。

走者がスタートしたら、迷わず送球するまで、繰り返し練習を積むしかない。自然と体が反応するように、今回の失敗を教訓に、同じミスを2度としないよう、心に刻んでほしい。

返球に目覚ましい進歩を感じただけに、3ランに直結してしまった進藤の送球遅れが、より鮮烈に心に残った。ありとあらゆることがホーム上では起こるのだ。私はファームを見続けて5年目。今回の送球遅れは、初めて目にした珍しいプレーとなった。(日刊スポーツ評論家)(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「田村藤夫のファームリポート」)