6月9、10日の2日間、愛知県高校野球連盟の主催で招待試合が行われた。今年の招待校は、センバツで史上3校目の春連覇を果たした大阪桐蔭だった。刈谷球場で行われた1日目は約1万人、岡崎市民球場で行われた2日目は約4000人が来場。両日とも開門前から400人以上が行列を作り、9日の先頭にいた来場者は、8日の午前10時半からほぼ丸1日並んでいたという。開催は今年でまだ4年目だが、すでに愛知高校野球の1つのイベントとなっているようだ。

 1年目は前年のセンバツで準優勝した履正社(大阪)。2年目は「機動破壊」の健康福祉大高崎(群馬)、3年目は早実(東京)と話題校を続々招待。特に早実を呼んだ昨年は、清宮幸太郎内野手(現日本ハム)が高校通算100号を放ち、多くの注目を集めた。大会開催の当初の目的は「100回大会に向けての強化」。愛知高野連の鶴田賀宣副理事長は「県内のチームの強化が1つ、また野球王国・愛知の活性化が目的です」と説明した。

 今年も県内の4校が、ドラフト候補の根尾昂内野手(3年)らを擁する大阪桐蔭と対戦し、経験を積んだ。今年のセンバツにも出場した東邦の林琢真内野手(3年)は、根尾からソロ本塁打を放った。東邦は普段の練習に人工知能(AI)搭載のピッチングマシンを導入しているが「初めて見るようなキレだった。普段から160キロの直球とか、ありえない球を(ピッチングマシンで)作ってみんなで振っているけど、それと同じくらいすごかった。根尾君がすごかったです」と驚くような球を体感。12-4で勝利した中京大中京の高橋源一郎監督(38)は「大阪桐蔭さんは昨日、今日と試合をされている中ですが、『思い切ってチャレンジしよう』と試合前に言っていた。結果こういう形になったのは、夏に向けて自信にできると思います」と手応えをつかんだ。

 招待試合について話を聞かせてもらった鶴田副理事長は、まるでイベントのコーディネーターのようだと感じた。招待校は1年以上前から探し、交渉する。大阪桐蔭の招待を考えたのは、実は根尾が中学3年の時。今回の会場の1つ、刈谷球場で行われた世界大会に出場した根尾の姿を見て「根尾君が高校3年生になった時に来てもらったら『凱旋(がいせん)』になるな」と計画した。清宮人気で混雑が予想された昨年は、警備員を通常の3倍に増やし、臨時駐車場を約1500台分確保。テレビでは「公共交通機関で来てください」と呼びかけた。そして今年は初めて、球場までの無料シャトルバスを導入した。

 試合の入場料は無料。経費はかさんでも「夏の大会のお客さんは増えました」と確実に愛知県内の高校野球への関心は上がっている。「最初は100回大会への強化が目的でしたが、やめ時が分からなくなって…」と話すが、もうすでに来年の招待校も決定。「今年の夏、来年のセンバツで名前を聞くようになる選手だと思います」と鶴田副理事長。どの高校が招待されるかを予想しながら、来年の6月を楽しみに待ちたい。【磯綾乃】