何年たっても忘れられない冬の光景がある。
記者になって間もないころ、1月の選抜大会出場校の発表を取材に、和歌山の高野山高校に行った。小学5、6年のとき、夏の林間学校で高野山に登った。真夏でも夜は涼しくて、織田信長、豊臣秀吉ら戦国武将の墓があって、ミステリアスな場所だった。その場所に、真冬に初めて足を運んだ。
1月でも、隣接する大阪に雪はない。だが南海電鉄の極楽橋駅を降りたら、あたり一面雪景色。ずぶずぶと足が雪に埋まる。幾度か雪道で転んだ。雪まみれの情けない姿を見て、先生方は「大変やったでしょう」とねぎらってくれた。元気な声が響く真っ白なグラウンドを眺めると、部員たちがボールを追って駆け回っていた。大雪の中、学校は球春を待つはなやぎに満ちていた。
だが、春の知らせは届かなかった。高野山は、選にもれた。校長先生は「補欠校に回るというご連絡をいただきました」と、苦しそうな表情で報道陣に告げた。運命を決めた当事者でもないのに、なぜか肩身がせまくなってそそくさと校長室を出た。校門に向かいながら、グラウンドを見た。静まりかえった真っ白なグラウンドに、部員たちが突っ伏していた。白い練習着と雪が溶け合い、あらゆる動きが止まっていた。
会社に戻ってアマ野球担当の先輩に向かい「今日の選考は、ないですよね」と知った風な口をきいて、叱られた。「地方大会を勝ち抜いた学校が出場する夏と違って、主催者が大会にふさわしいと決めた学校を招待するのがセンバツ。近畿大会で未勝利でも、選ばれる場合はある。センバツの特徴を勉強してから、物を言え」と怒られた。それでも、雪の中の光景が頭に焼き付いて離れなかった。悲嘆にくれる高校球児の姿は、雪景色の記憶になった。
今年のセンバツが、揺れている。東海の2校目に、4強の大垣日大(岐阜)が選ばれた。準優勝の聖隷クリストファーは選にもれた。多くの関係者やファンが異を唱えるのは過去にもあったことだが、今回は日本高野連が主催の毎日新聞社がコメントを出す異例の事態になっている。
4強どまりの結果に終わったが、大垣日大の力量はセンバツに出ておかしくない、という声を聞いた。一方で、主力をケガで欠きながらチームワークでカバーし、決勝まで進んだ奮闘がセンバツ切符で報われなかった聖隷クリストファーに多くの人が心を寄せるのもわかる。
理解できないのは、第3者からの大垣日大への中傷。大垣日大は、主催者に選ばれただけなのだ。聖隷クリストファーを悲しませ、大垣日大を萎縮させるのでは、こんなやりきれないことはない。【堀まどか】




