「ゴオーッ」という米軍ジェット戦闘機のすさまじいエンジン音が目覚まし時計代わりだ。少なくとも午前7時台からバンバン飛んでいる。こればかりは関西で聞くことのない音だ。

午前中、広島がキャンプを張るコザしんきんスタジアムに足を向けた。無観客でがらんとしたスタンドに知った顔を見つける。阪神のスコアラー・御子柴進だ。各チーム、相手球団にはそれぞれ専属の担当をつけており、阪神も同様。御子柴は今年からカープ担当になったという。

「やっぱり今年のキャンプはさみしいですね。なんとかメディアのみんなで盛り上げてくださいよ」。普段、寡黙な御子柴がマスク越しにそんなことを言う。独特のフォームで阪神入団時は「小林繁2世」と言われた男だ。

広島はいわゆる「早出特守」を行っていた。次々にノックが飛び、たまには守る選手がそれをうしろにそらす。そんな光景を見ていると、つい、あの話題が出てしまう。失策数だ。

阪神は昨季85失策でセ・リーグのワースト。その次によくなかったのが73失策の広島だ。いずれも土のグラウンドを本拠地にしているという共通点もあるが、やはりプロとしては言い訳にはしたくないところだ。

そんな話をすると「そうですね。ずっと課題ですよねえ。でも失策は投手との関係性もあるんですよね」と御子柴が言う。投手の間合い、テンポのようなものが守備には大きく影響するという話だ。

「内野手なんて1球、1球、膝を落として構えるわけでしょ。そこで間合いが合わないとやっぱりうまくいかないですよね」。よく聞く話ではあるが、やはりプロはいつもそんなことを考えている。

間合い、タイミングは難しい。四球を出す投手を野手がいやがる傾向は間違いなくある。しかしそればかりではない。けん制球が多かったり、投球間が長かったりといろいろなタイプがいる。投手はやはり打者を抑えるのが最優先のポイントだろうし、これはなかなか難しいところだ。

指揮官・矢野燿大、勝負の3年目。失策を撲滅するため臨時コーチに往年の名手・川相昌弘を招き、連日、練習が続いている。これがしっかりと実を結べばいい。同様に投手の間合いと守備が連動し、試合のリズムを作っていく様子にも注目していきたい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

御子柴進氏の投球フォーム(1988年8月5日撮影)
御子柴進氏の投球フォーム(1988年8月5日撮影)