いろいろと理由はあるのだろうが、横浜スタジアムでDeNAと対戦するときの阪神は強い。今回は五輪余波の特例で東京ドームを会場にしているがキッチリ敵地で連勝。6、7月に甲子園で戦った6試合では1勝5敗と圧倒されていたのに、本当にDeNAともども「どっちがホーム?」と思ってしまう結果だ。

そんなこともあってか伊藤将司、大貫晋一の投手戦を追いながらもなんとなく勝てるような気がしていた虎党も多いのではないか。そこで、もう1つ「勝てる気ィしててん」という要素を考えてみたい。それは阪神下位打線の粘りといったものではないか。

両先発が勝利投手の権利を得るため懸命に投げていた5回が対照的だった。阪神は6番ロハスからの打順。前の打席で2号ソロを放って気をよくしていたのかこの打席、ロハスは集中していた。最終的に空振り三振に倒れたものの8球、粘っている。

さらに次の中野拓夢も8球を粘って四球。1死一塁となって打席に入った8番・梅野隆太郎も8球を粘った。右飛に終わったものの、この間に中野の二盗もアシスト。そして9番・伊藤将は5球目で見逃し三振で3アウトと、得点こそできなかったがこの回だけで大貫に29球も投げさせた。

大貫は4回まで52球なのでいいペース。しかし5回、下位打線に粘られて球数を要してしまった。対照的に伊藤将は5回、阪神同様に6番ソトからのDeNA打線3人をわずか8球で切った。敵の下位打線があっさりしていたのか、伊藤将-梅野バッテリーの攻めがよかったのか、少ない球数でアウトを重ねたのだ。

「(矢野)監督も投げることを勧めてくれたので…」。7回2死一、三塁の好機で打席に立った伊藤将はヒーローインタビューで明かしていた。負けていれば間違いなく焦点になった場面だろう。だが指揮官が続投させたい気持ちになっていたのは理解できる。

DeNAは1点リードの8回に出した左腕エスコバーが誤算としか言いようない展開だ。「なかなか思い通りにはいかない。いつも抑えられるわけじゃない」。指揮官・三浦大輔は投手陣をかばって話していたが偽りのない心境だろう。

勝ち越されても終盤にひっくり返せるムードを醸し出し、それを実現させたのは伊藤将の好投と並び、相手を疲弊させた下位打線にあったと思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

DeNA対阪神 8回表阪神無死満塁、中野は左犠飛を放つ(撮影・加藤哉)
DeNA対阪神 8回表阪神無死満塁、中野は左犠飛を放つ(撮影・加藤哉)