1点も取れずに負けた15日ヤクルト戦。ズバリ、大山悠輔は仕事をしたのか否か。この試合、得点はヤクルトが1回に1点取っただけ。状況はすべて「阪神が1点を追う」場面である。

5番三塁でスタメン出場。2回、先頭で入った打席は“左飛”だったが相手野手が打球を見失い、二塁打に。虎党からため息が出たのは4回か。無死一塁で遊ゴロ併殺打。それにしても走者のいる状況でよく回る。6回は2死一、二塁。絶好のチャンスで、ここは四球を選んだ。

さらに8回はちょっとしびれる場面になった。2死二塁となったところでヤクルトは4番マルテを申告敬遠。一、二塁にして大山との勝負を選んだ。じわっと神宮の虎党が沸く。「ナメとんのか。見とけよ」。そういう場面だ。しかし意地の一撃ではなく、ここもフルカウントからの6球目を選んで歩いた。

そこで冒頭の答えだ。もちろん「仕事をした」だろう。安打だけが打者の結果ではない。ボール球に手を出さないのも任務だ。「打線」の言葉通り、つなぐのも重要である。6番サンズに結果が出ていれば称賛に値したはずだ。

しかし。でもな。同時にそんな気持ちが残ってしまうのも事実だ。前日14日の試合後、指揮官・矢野燿大が残したコメントを思い出す。5打数1安打の大山だが打ったのは無走者のときだけ。好機では見逃し三振に倒れるなど結果が出なかった。それを聞かれたときである。

「だから悠輔だけじゃないじゃん、そんなん。悠輔だけ取り上げたんなよ。マルテだって打ってないじゃん。最後、打ったけど。打つときもあるやないか。悪者にするなよ」

念のため書くが、いわゆるキレたような感じではなく質問した記者を諭すようなトーンだった。だが、そこは主砲を期待される選手である。「そら、しっかりしてほしいわ」というような答えもあり得たと思う。

だけど矢野はそう言わなかった。監督として目指す自身のスタイルがあるのだろう。思うのは監督に気を使わせないよう、やはり大山には周囲を黙らせる結果をガンガン残してほしいということだ。

「打つときもあるやないか」。1軍で主軸なのだから、それは当然だ。望むのは、その確率を上げてほしいということ。苦しいだろうが、この世界、自分を救うのは自分だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)