指揮官・矢野燿大よ。元気を出せ。そう思えて仕方がない。開幕8連敗。「勝たないとね。ダメなんで…」。同じ言葉を繰り返すのもきついだろう。だが今こそ、言い続けてきたことを実践するときでもある。
最後の場面はいわゆるギャンブルスタート。1点差に迫り、なお1死二、三塁。絶好の同点、逆転機だ。三塁走者・近本光司はスルスルとリードし、佐藤輝明のバットが球に当たった瞬間、スタートした。しかし打球はハーフライナーの遊直になり、無念の併殺で試合が終わった。
「あ~っ」という虎党のため息が充満する東京ドーム。佐藤輝は両手で頭を抱える。三塁ベースに手を伸ばし、うなだれる近本は悔しさをこらえていた。みんな必死だ。勝ちたい思いがあふれている。それこそ“気”は感じるのだ。
初年度の矢野阪神にあって4年目の今季、完全になくなったものは何か。それは「矢野ガッツ」だ。19年は安打が出ただけでベンチを飛び出し、ガッツポーズで塁上の選手をたたえていた。実際は2年目からほとんど姿を消していたが、今季はここまで、当然と言えば当然だが、チャンスになっても矢野が躍動する様子はまるで見られない。
白いマスクをして、ベンチに立ち尽くす姿ばかり目立つ。目もうつろ。作戦も1回無死二塁で2番の中野拓夢に犠打指令(結果は三振)とは、少し消極的にも思える。元気がない。心の中はこんな気持ちでいっぱいだろうと想像する。
こんなはずでは。なぜこうなってしまった-。そう思いながら自分のいたらなさに嘆き、虎党への申し訳なさが募っているはず。2試合続けて1回に1発を浴びるような展開は、正直、采配の部分を超えているとも思うけれど、それもこれも含めて自分の責任なのは痛感しているだろう。
それでも、いや、だからこそ。明るさを取り戻してほしい。カラ元気でもいいではないか。チャンスで選手がベンチの前に出てきたとき、自分も声を出せ。
いまの阪神を鼻で笑える人生を送っている人がどれだけいるか。誰しも自身の思い、願いとは違う現実に翻弄(ほんろう)され、泥にまみれ、苦しみながら生きているのだ。プロ野球を、阪神を応援するのはその癒やしでもある。いいときばかりのはずがないのだ。今こそガッツポーズをつくり、元気を出し、戦いに臨んでほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




