仰天したのは2回だ。1死満塁で打席は3試合ぶりスタメンマスクの梅野隆太郎に回った。今季の梅野は併殺打が多い。試合前まで「8」とリーグ最多。相当ついてない…と思っていたら、はたして。センター返しの当たりは先制打に見えた。しかしヤクルト高梨裕稔が出した右足か投手板かに当たり、二塁・山田哲人の前へ飛んだ。梅野は両手で頭を抱える。これで今季9個目の併殺打になった。

この数字、結構、激しい。昨季の“併殺王”は中日・高橋周平の「21」。20年も「21」で選手はやはり中日の阿部寿樹だった。さらに19年はこれも中日ビシエドの「22」。阪神ではマートンが15年に「21」を記録して最多になっている。

つまり年間「20」ほどで最多になる計算だが梅野は34試合目にして「9」。梅野自身は出場25試合なので、この数字は異様ですらある。このツキのなさが阪神の不振につながっているのか-という気もするが意外にそうでもないようだ。

梅野が併殺打を記録したのは今季8試合。4月1日の巨人戦(東京ドーム)では2つ記録している。そのチーム成績は5勝2敗1分け。ついでに言えばこの日で4連勝だ。どんな関連があるのかないのか。それは分からないがチーム勝率からすれば考えられないような勝ちっぷりだ。

そもそも併殺打が多いのはチーム打撃に関係のない主軸打者が多い。先に名前を挙げた面々を見ても好打者ばかり。梅野の場合は8番を打つことが多く、こちらもつなぐ状況にはないので併殺打が多くなってもおかしくはない。

併殺打と言えば思い出す。現在の打撃コーチ・北川博敏とかつての阪神監督・岡田彰布のエピソードだ。岡田が阪神2軍監督だったとき。併殺が多く悩んでいた北川が打席に向かう前にこう言ったという。

「ゲッツー打ってこいよ。そんなん。バーンとショートのところに。しっかり打つからゲッツーになるんよ。ボテボテではならんよ」。自身も強打者だった岡田からすれば併殺は避けて通れないし、おそれても仕方がないというものだ。

坂本誠志郎との併用が続く梅野。これでスタメンマスクの試合は8勝11敗1分けになった。坂本のそれは3勝11敗。もちろん坂本もいい選手だし、併用策は指揮官・矢野燿大の考えだけど、もう少しチームが落ち着くまで固定してもいい気はしている。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対ヤクルト 2回裏阪神1死満塁、梅野は二ゴロ併殺打に倒れる。投手は高梨(撮影・加藤哉)
阪神対ヤクルト 2回裏阪神1死満塁、梅野は二ゴロ併殺打に倒れる。投手は高梨(撮影・加藤哉)
阪神対ヤクルト 9回裏阪神2死満塁、山本(中央)はサヨナラの押し出し四球を選びナインからウオーターシャワーを浴びる(撮影・上田博志)
阪神対ヤクルト 9回裏阪神2死満塁、山本(中央)はサヨナラの押し出し四球を選びナインからウオーターシャワーを浴びる(撮影・上田博志)