5月26日は「ラッキーゾーンの日」だ。戦後間もない47年のこの日、日本で初めて甲子園にラッキーゾーンが設置された。知らない人はいないと思うが本塁打を出やすくするために外野フェンスの前に柵を置いたものだ。

吉田義男率いる猛虎軍団が日本一を決めた85年には存在し、長く甲子園の名物だった。しかし選手の体格もよくなり、ボールも飛ぶようになるなど時代背景も変わったということで91年のシーズン限りで撤去された。今も柵の一部は甲子園資料館に保存されている。最近になって福岡ペイペイドームやZOZOマリンに名称こそ違うが同様のものができているのは時代は巡るということか。

そんなことを思ったのは近本光司の飛球を見たせいだ。「ラッキーゾーンがあったらな」とぼやいたのは3回。会心の当たりは右翼フェンス直前で野手のグラブに収まった。この日も浜風が吹いており「そっちに打ったらあかん」と思ったら案の定だ。社高で近本の後輩である辰己涼介が4回、対照的に左中間に放り込んだのを見て、余計にそう思った。

「ラッキーゾーン復活」は虎党の間でたまに話題になるが実現する気配はない。高校野球の問題もあるし「相手打者も利する」という意見もある。この日のように西純矢が2発食らったのを見るとそちらに現実味がある気もしてしまう。もっとも普通に考えれば本拠地での試合が多い阪神にプラスに働くはずだが-。

浜風に乗って快調に飛んだのは2回に出た大山悠輔の8号ソロだ。大山は甲子園で今季3本目と全球場の中でもっとも打っている。立派なのは佐藤輝明だ。左打者ながら10本のうち甲子園でこれも3本。横浜スタジアムと並んで最多だ。

長距離砲の2人が本塁打の出にくい甲子園でそれなりに打っているのはたいしたものなのだが、それにしても得点は本塁打だけでするものではないだろう…という気はした試合だ。大山の1発だけで勝つのは苦しい。打線がつながらないのは相変わらずである。

「流れ的にね。向こうに持っていかれたままになったんで。言い訳はできないけど」。指揮官・矢野燿大が言うように何も仕掛けられないままの展開だ。これでは勝機も生まれない。阪神を含め、セ・リーグのBクラス球団は全敗でAクラスは全勝か。せっかくの交流戦が面白くない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)