「勝ててよかった…」。死闘とも言える試合を制した後でつぶやいたのは島本浩也だ。勝利投手の権利があった青柳晃洋を4回2/3であきらめ、指揮官・岡田彰布が送り込んだ2番手左腕。宮崎敏郎に代打逆転3ランを被弾する。序盤の4点リードをはき出し、追う展開になってしまった。

だが再び流れが変わる場面は8回にやってくる。1点を追う阪神打線は5番手ウィックを攻め、無死満塁に。ここで代打・渡辺諒を迎え、DeNA内野陣は併殺態勢を取る。同点覚悟の布陣だ。だが渡辺の痛烈なゴロを捕球した牧秀悟はバックホーム。これがそれて、三走・大山悠輔が同点の生還をするのだ。

「あれは驚いた。ゲッツー態勢にしていたのにね。打球が強くて、しかも正面に来たから思わず本塁に投げてしまったのかな」。内野守備走塁コーチ・馬場敏史は相手の痛い失策について、そう振り返った。

野球は何が起こるか分からない。その8回表が始まったころ。マツダスタジアムでは首位・巨人が3点リードの終盤8回に広島に逆転を許し、まさかの敗戦を喫していたのだ。

途中まで阪神は連敗の気配がちらつき、巨人は余裕の勝利となるはずだった。もし、そのままの結果になっていれば巨人の優勝マジックは「4」。22日からの「伝統の一戦」で阪神が連敗すれば、敵将・阿部慎之助が甲子園で宙に舞う可能性もあったのだ。

しかし巨人は負け、そして阪神は勝った。これでゲーム差は再び「2」に。22日からの連戦は、たとえ阪神が連勝できても順位は変わらない。それでもゲーム差はなくなる。そうなれば、どんな結末が待つかは誰にも分からない。いずれにせよ虎党だけでなく野球ファンの多くが楽しめる展開になったことだけは間違いないと思う。

「そんなもん、勝てるか言うても、向こうも勝つ気やねんから。両方勝たれへんねんから。どっちか勝敗つくけど。見とったらええやん。勝敗つくんやし」

試合後、汗をかきながらタバコをくゆらせた岡田は連戦への意気込みを問われ、そう答えた。歌舞伎役者が大見えを切るような気配を漂わせたが、そこは岡田、なんとなく面白かったのである。さあ今季ラストの直接対決2番勝負。今年、100周年を迎えた甲子園という大舞台で意地のぶつかり合いだ。ここは、しっかり見届けたい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

DeNA対阪神 5回裏終了後、ベンチへ戻る阪神島本(左から2人目)を労う青柳(左)(撮影・横山健太)
DeNA対阪神 5回裏終了後、ベンチへ戻る阪神島本(左から2人目)を労う青柳(左)(撮影・横山健太)