投手戦、接戦を予期したビッグプレーだった。阪神1点ビハインドの2回表。この回先頭の牧原大成が右翼線二塁打を放ち、無死二塁となった。ここで8番・海野隆司の当たりはセンター前へライナーだ。

これに突っ込んできた中堅・近本光司が、さらに前へダイブして地面すれすれでキャッチ。すでにスタートを切っていた二走・牧原は戻れずゲッツー。無死二塁が2死走者なしになり、9番・モイネロも倒れ、ここは事なきを得たのだ。

試合はまだ序盤。無理してそらしでもすれば、失点した上になおピンチが広がるケースだ。終盤ならギャンブルもあるだろうが、2回と言うことを考えれば、前に落とし、処理してもおかしくはない。試合を進めていく上では仕方ない状況だったと思う。

だが、この日ばかりは“条件”が違っていた。相手先発は無敵のモイネロだ。今季ここまで6勝0敗、防御率1・26。ハッキリ言って阪神打線は勝率10割の左腕から、得点できるかどうかすら分からないのだ。

だからこその思い切ったプレーだった。2点目を取られれば負け。そこまで明確に思っていなくても「これは捕らなければ」という覚悟が近本にあったはず。だからこその身をていしたプレーだった。

「あれは、もちろん接戦になることを想定したプレーです。だから少しだけ前に守らせていた。そこからさらに前に来たんですけど。どうせ前に落としても(二走は三塁を)回ってくるだろうし」-。外野守備兼走塁コーチの筒井壮はそう説明した。

「2人とも好投手ですからジリジリとした戦いになると思いますけど我慢強く。終盤まで行くと思いますから手に汗握って見てもらいたいな、と」。指揮官・藤川球児はこの試合に向けて、そんな話をしていた。

そう思っていれば一方的な展開になったり、あるいはどちらの投手も打たれて打撃戦になったりというのも“あるある”なのだが、この日は予感的中。5回に大山悠輔の適時打で追いつき、1-1で延長戦に突入となったのである。

6回で降板したモイネロが111球、8回まで粘った村上が123球と迫真の投手戦は延長10回、3番手・及川雅貴が無念の失点で競り負け。それでもこの日のように状況を考え、勝利への執念を見せるプレーがあればズルズルと後退はないと思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)